[原子力産業新聞] 2005年11月17日 第2308号 <2面>

[FNCA]活動成果紹介の講演会 「アジアの発展と原子力」テーマに

 文部科学省は10月28日、東京・港区の航空会館でアジア原子力協力フォーラム(FNCA)活動の成果を紹介する講演会「アジアの発展と原子力」を開催した(=写真)。

 冒頭、FNCAコーディネーターを務める町末男原子力委員は、原子力技術の他技術に勝る点を活用し、アジア地域の社会・経済的発展を促進していくというFNCAの理念、目的を指摘。目に見える成果を目指す各分野のプロジェクト活動の最近の成果を紹介するとともに、今後の協力の取り組みにおいて、日本のリーダーシップと各国のパートナーシップの重要性を強調した。

 会では医学分野について、同プロジェクトリーダーの辻井博彦・放射線医学総合研究所重粒子医科学センター長が、FNCA枠組みで行われているがんの放射線療法の共同臨床試験による治療成績向上について発表した。子宮頚がんのプロトコル(標準治療手順)による成果を踏まえ、現在は上咽頭がんのプロトコルを作成中という。また、同氏によると、途上国のがんは、特に肝臓、胃、食道など、予後不良の部位が多く、これらに対する積極的対策が必要なことがあげられた。

 また農業分野では、同プロジェクトリーダーの中川仁・農業生物資源研究所放射線育種場長が、放射線育種による多国間協力プログラムの成果を紹介。

 また、倪嵋楠・中国原子能科学研究院原子力物理部助教授は、農業、医学の分野の他、廃水処理システム、年代測定、密輸対策のためのコンテナチェック等、中国の幅広い放射線利用の現状を披露した。

 FNCAでは昨年度より原子力エネルギーに関する検討パネルを立ち上げたが、これに関連して、藤冨正晴・日本エネルギー経済研究所常務理事は、「エネルギーの需要が急増するアジアの持続的発展戦略」と題する講演を実施。昨今の石油価格高騰、産油国の政情不安、中国のエネルギー動向と京都議定書を反映した将来へ向けたエネルギー戦略を解説し、その中で同氏は、エネルギープロジェクトは開発に長い期間を要することから、地域協力に際しては、プロジェクトを先に決めるか、協力枠組みを先に決めるのかを、どこかで決断する必要があることを主張した。


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