[原子力産業新聞] 2005年11月17日 第2308号 <3面> |
[原子力学会]水炉燃料専門家会議開く日本原子力学会が主催し、韓国、中国、米国及び欧州の各原子力学会の共催による、「水炉燃料専門家会議(WRFPM、=写真)」が、17か国217名の原子燃料専門家が一堂に会し、アジアで初めて京都市の京都テルサにて、10月2日から6日まで開催された。 この会議は、1975年に始まった米原子力学会による軽水炉燃料挙動会議と、1995年からの欧州のTOPFuel会議が、欧州と米国で交互に開催されていた専門家会議を発展、主催者として日本、韓国、中国が参加する新たな枠組み協定が2005年に締結され、今後3極で持ち回り開催されるもの。 会議のオープニングに当たって、山脇道夫プログラム委員長(東京大学名誉教授)が出澤正人組織委員長(原電顧問)ら協定締結国5か国の代表をメインステージに登壇させ、アジア初の水炉燃料専門家会議(WRFPM)の開会を宣言した。 つづいて、河原日本原子力学会副会長が、原子力発電の安全性・信頼性と経済性を達成するためには、原子燃料の健全性の確保が不可欠であり、高燃焼度、出力向上、長期サイクル達成を支えるゼロ・リークへのチャレンジを継続し、専門家の情報交換による最新知見の交流が大切であると歓迎の挨拶を行った。 基調講演において、JNESの上村博士が日本の高燃焼度燃料確証試験の成果を披露し、日本における燃料信頼性の向上と確証試験、規制基準の相互関係に関する取り組みを紹介した。 米国電力研究所のローザ・ヤング博士は、原子燃料信頼性プログラム研究の現状を報告した。燃料の平均的な損傷率は90年代のGWeあたり七〜八体から一体以下に減少している。これは、近年の米国における運転サイクルの長期化、アグレッシブな燃料交換計画、出力向上、水化学面の変更など大きな環境変化にもかかわらず、電力業界と燃料製造メーカーによる原子燃料信頼性プログラムにより、燃料損傷メカニズム問題の大部分が解決されたことによる。しかし、根本原因がまだ解明されないものもあり、継続的な研究開発が重要であると述べた。 中国からは、将来の原子力発電計画が公表され、これまで明らかにされていなかったバックエンド、再処理の立ち遅れに対し、原子燃料サイクルの完結へ向けた計画が初めて示された。 OECD/NEAからは、ノルウェーのハルデン研究炉を使った、30年以上にわたる実証試験や確証試験の成果が報告されるなど、広範な領域におけるデータの蓄積と規制・基準への反映が報告され、コードの検証などに使われ、安全規制の分野において多大な貢献を果たしてきたことが紹介された。この分野の研究は、燃料関係の安全審査の判断基準やデータベース構築に役立ってきたが、特に日本がリードしている冷却材喪失事故や苛酷事故時の極限状態を模擬した反応度投入や出力急上昇試験など、燃料と被覆管のふるまいに関する最新の研究成果と試験結果が報告され、各国の専門家による議論が行われた。 オーラル40件、ポスター60件の論文発表は、燃料製造、運転、中間貯蔵、再処理の各プロセスに加えて、安全性評価とコンピュータコード、モデリングまでと広範な広がりがあり、日本が最先端を行く燃料ペレットの原子炉内での照射時の構造変化挙動やその理論的解明への研究の進展が報告された。また、ルーマニアやチェコの研究炉など、これまであまり公開されてこなかった東欧圏の情報もIAEAを通じて紹介された。 3日夜のレセプションでは、祇園祭にも登場する、重要無形文化財の「六斎念仏踊り」のパフォーマンスが披露された後、舞妓さんが登場し、京踊りの後ステージを降りて参加者との記念撮影が始まり大きな人だかりで賑わい、京都ならではの趣向が伯仲した議論の国際会議に華を添えた。最終日は、山本核燃料部会副部会長(GNF)により、本会議の成功と、次回はスペインのサラマンカで開催されることが告げられ、4日間の幕を閉じた。 |