[原子力産業新聞] 2005年12月15日 第2312号 <3面>

[世界原子力協会] 「原子力発電が最も安価」 2030年に原子力5.2億kW予測

 英国ロンドンに本拠を置く世界原子力協会(WNA)は1日、発電コストに関して、原子力が他の電源よりも大幅に経済的だとする最新の報告書「原子力発電の新たな経済性」を発表した。割引率が5%の場合、1MWh(1000kWh)あたり、原子力発電コストは21〜31ドルに対して、石炭火力は25〜50ドル、天然ガス火力は37〜60ドルと指摘(=表)。

 これらの数値は、原油価格高騰以前のものであることも相まって、「原子力発電は長期的に十分競争できる」としながらも、政府が規制合理化を行い、供給安定性と環境適合性の高い原子力発電への投資に優遇措置を取るよう求めている。

 WNAの報告書は、2003年以降に発表されたマサチューセッツ工科大学(MIT)、英国王立工学アカデミー、国際エネルギー機関(IEA)、OECD・NEAなどが行った調査を取りまとめたもの。

 WNAは、原子力の「利点」として、@国内的には電力料金の安定性とエネルギー・セキュリティA世界的には温暖化ガスを放出しない――を指摘、原子力発電は公共政策上、クリーンテクノロジーだと指摘した。

 将来の世界の原子力発電規模についてWNAは、「標準ケース」の場合、現在の3億6700万kWが、2020年に4億4600万kW、2030年に5億2400万kWへ増加すると予測。「高成長」ケースの場合には、2030年に7億4000万kWと、現在の2倍以上への成長を見込む(=グラフ)。これらは、今後25年間に、世界で新たに200〜400基の原子力発電所を建設することを意味する。

 原子力発電の経済的競争力が向上した原因は、@1kWあたりの建設費の削減A資金調達コストの低減B運転費の削減C廃棄物・廃炉コストの低減――が原因と指摘。建設費については、設計標準化、建設期間の短縮、技術の進歩等を挙げた。資金調達コストについては、許認可手続きの簡素化による投資リスクの低減等を挙げている。

 これらを受けてWNAは、「原子力発電は経済性だけでも、他の電源に対して優位性がある」とし、「経済的には、原子力発電は政府の補助を必要としない」と述べ、温暖化ガスを放出しない環境適応性は一種の「ボーナス」だとしている。

 一方、政府に対しては、@原子力安全規制の合理化A経済的に競争力があり環境上必要な技術への投資の奨励策――を求めている。


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