[原子力産業新聞] 2006年1月5日 第2313号 <2面>

[展望] 「ルネッサンス」を現実に 多国間管理構想など積極対応が必要

 昨年は、米国において25年ぶり以上となる新規原子力発電所建設の動き、英国における原子力見直しの動き、開発途上国においては新規原子力発電導入の動きや、中国、インドなどで急速な原子力発電拡大が発表され、海外では原子力発電の見直しが進んだ。国内においても、核燃料サイクル政策の再確認をはじめ、六ヶ所再処理工場、中間貯蔵、プルサーマル、MOX燃料加工、「もんじゅ」の改造工事など、長年の課題に大きな進展が見られた年であった。

 2006年は、このモーメンタムを、「原子力ルネッサンス」の大きなうねりへと発展させる節目の年としたい。原油価格をはじめとするエネルギー価格の高騰、地球温暖化への懸念の増大などの中、不可欠の選択として、原子力には国際的な追い風が吹いている。この「風」を現実の「ルネッサンス」につなげるために、なすべき事は多い。

 米国においては、電力など数グループが米原子力規制委員会(NRC)に早期サイト許可や建設・運転一括許認可申請の動きを見せていたが、今年中にはこれらが現実のものとなると見られる。最終的な建設決定までにはまだまだ紆余曲折が予想されるが、日本の原子炉メーカーにとっては大きなビジネスチャンスとなる。日本では2020〜30年頃の既設原子力発電所リプレースまで、国内の新規建設が著しく落ち込む時代が予想されており、国内の産業・人材基盤を維持するためにも、公的資金による支援も含め、米国市場へ本格的に取り組む必要がある。また国内の原子力産業の経営基盤を強化するとともに、海外と比べ高いと言われる日本の原子力発電所の建設費の合理化に官民が努力する必要がある。

 英国も年央には、原子力発電の推進を含むエネルギー政策の転換に踏み切る可能性が大であり、新たな原子力発電所の建設につながる動きが期待できる。

 急速な経済発展に伴いエネルギー需要が増大し、世界のエネルギー需給を逼迫させている中国、インドとも、急速な原子力発電拡大を計画している。2020年までに原子力発電設備を、中国は4000万kW、インドは2000万kWへと拡大するという計画は、かつての石油ショック時の日本の計画を思い起こさせるが、当時の状況に加えて、地球温暖化と石油資源の究極的な枯渇が見えてきたという新たな状況がある。地球環境を守り、世界全体のエネルギー需給を安定させるためにも、この2か国における原子力発電拡大に、日本としても積極的に協力していく必要がある。そのことが、アジアにおける資源制約と経済制約に起因する国際的な緊張の緩和に大きく役立つと考える。


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