[原子力産業新聞] 2006年1月5日 第2313号 <4面>

[年頭所感] 「新成長戦略」への挑戦 経済産業大臣 二階 俊博

 平成18年の新春を御壮健でお迎えのことと存じます。謹んでお慶びを申し上げます。

 昨年の秋、小泉総理から経済産業大臣の重責を命ぜられました。各方面へごあいさつに伺うこともできないまま、就任の直後からWTO交渉やAPEC閣僚会合等の数々の国際交渉の場に臨みました。

 国内問題では、政府系金融改革や三位一体改革等の重要課題に直面しました。関係者の御協力をいただき、何れも積極的に「改革」に貢献してまいりました。

 本年も、国内外に山積した数多くの課題に全力で取り組み、国民の皆さまから、特に中小企業の皆さまからもやって良かったと評価していただけるような真の意味の改革、「改革続行内閣」の名にふさわしい改革に向けて、引き続き努めてまいります。

 さて、現在我が国の景気は緩やかに回復しつつあり、デフレ脱却の傾向にあります。ただ、企業規模において、地域において、依然としてばらつきがあることも事実であります。

 また、中長期的には、少子高齢化と人口減少社会の到来、グローバル化と国際競争の激化、エネルギー・環境制約の高まり等、我が国経済を取り巻く環境が大きく変化しつつあります。

 さらに、政府としても歳出・歳入一体改革が待ったなしの課題となっております。これらの構造的変化に伴う諸課題にチャレンジしていくためには、我が国経済の活性化による「国富の拡大」が不可欠であり、このことこそ経済産業省に課せられた使命であります。平成18年という年をそのための飛躍の年にしてまいります。

 具体的には、以下に述べる経済産業政策を国民の皆さまの理解と協力のもとに断固たる決意で推し進めていくことが重要であります。

 まず、「モノ作り産業」から「サービス産業」に至るまでの各分野において、我が国産業の競争力を強化していくことが必須です。そのために、国際競争力の強化と地域経済の活性化を2つの柱とした「新成長戦略」を早急にとりまとめます。

 また、我が国の強みの源泉である基盤技術を担う高度部材・基盤産業の支援とともに、研究開発、人材育成の支援等に積極的に取り組みます。特に、我が国の誇る中小製造業の技術力の一層の強化を図ってまいります。

 しかし、何よりも忘れてはならないことは、大企業、中小企業を問わず、「モノ作り」の現場の技術者の皆さんが我が国産業の中心的役割を担っていただいていることです。その誇りを持って、素晴らしい結果が出せるよう一層の奮起と活躍を期待するものであります。

 知的創造について申し上げます。知的創造活動を競争力に直結させることが重要であります。知的資産を活用した経営の促進や、さらに民間の力も活用して特許審査の迅速化、模倣品の激減対策、デザイン保護といった知的財産保護を進めてまいります。

 また、企業規模や地域にばらつきのある今日の我が国経済を一段と活性化させるためには中小企業政策・地域の経済産業政策が極めて重要です。

 エネルギー資源の大半を海外に依存する我が国にとって、その安定供給は最重要課題です。

 昨年は、自然災害などの事情も加わり世界的原油高に見舞われ、我が国としても石油備蓄の放出等で対応してまいりました。

 近年の原油価格高騰の根底にあるのは、アジアの需要増大等エネルギー市場における構造的な要因です。これに対応するため、エネルギー安全保障を重要な基点としつつ、中長期的な視点から、エネルギー戦略の見直しを積極的に進めてまいります。

 まずは、我が国が得意とする省エネルギーを推進してまいります。

 次に、安全の確保を大前提とした原子力発電や核燃料サイクルの着実な推進、新エネルギーの更なる導入促進等により、供給源の多様化を図ります。

 また、ロシアやイラク等戦略的地域での自主開発の推進、東シナ海での資源権益の保全等、エネルギーの安定供給の確保に努めてまいります。特に東シナ海に関しては、同地を対立、緊張の海にするのではなく協力の海とするため、粘り強い交渉を行ってまいります。

 同時に、産油・産ガス国との友好関係を大いに深め、いざという時には相手国の大臣に電話1本でも話ができるようなホットラインならぬハートラインの関係の構築に平時から努めます。

 さらには、中国、インドを始めとしたアジア諸国との緊密かつ友好的な関係を築きつつ、世界最高水準にある我が国のエネルギー・環境分野の技術やノウハウ等も活用しながら、アジア全体、さらには世界全体での問題解決に積極的に貢献してまいります。

 また、経済活性化やエネルギー政策と両立させつつ、地球温暖化問題や循環型社会の構築といった人類共通の課題に産業界の皆さんや地方の皆さんと共に、国を挙げてチャレンジしていくことこそ、我が国に課せられた重要な責務であると考えます。

 具体的には、京都議定書の目標達成のため、京都メカニズムの本格活用等の施策を着実に国民運動的に推進するとともに、次期枠組みに関する国際的な議論に率先して積極的に参加してまいります。

 また、容器包装の更なる排出抑制と資源の有効利用を図るための制度の見直し等を進めてまいります。

 私は経済産業行政を担当する閣僚として、こうした諸課題の解決のために、我が国経済の活性化に懸命に努め、国家の経済力の増大と国民生活の向上のために前進する決意であります。

 年頭に当り、私及び我が省の決意の一端を申し上げ、皆さまの一層の御理解と御支援をたまわりますようお願い申し上げます。皆さまの御多幸と御健康を心から祈念いたしまして、新年のごあいさつといたします。


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