[原子力産業新聞] 2006年1月5日 第2313号 <4面> |
[年頭所感] 国民に支持される科学技術目指す 内閣府特命担当大臣(科学技術政策) 松田 岩夫新年おめでとうございます。 本年は、4月から第3期科学技術基本計画がスタートします。昨年末に総合科学技術会議が、第3期計画の基となる「基本政策」について答申を行いましたが、私も、昨秋の担当相就任以来、精力的に検討に参画してまいりました。特に、この答申にも記載されていますが、第3期計画期間中の政府研究開発投資目標の総額については、小泉内閣総理大臣から直接の命を受け、財務大臣をはじめ関係者と調整した結果、約25兆円とすることに決定しました。厳しい財政事情にもかかわらず、第2期計画における24兆円を上回る目標額を設定できたことにより、我が国が、人類の知の結晶である科学技術を資源として生きていくことを内外に示せたものと考えています。 この答申に基づき策定する第3期計画の推進にあたっては、科学技術の成果をしっかりと示すことにより、国民の皆様に支持される科学技術を目指してまいります。 科学技術の中でも、原子力の研究開発利用は、資源の乏しい我が国にとって貴重なエネルギー源であるとともに、医療分野をはじめとする放射線利用など、経済・社会的発展や国民生活の向上に大きく寄与しております。 このように重要な原子力について、原子力委員会は、昨年10月に、今後10年程度の間に各省庁が推進する施策の基本的方向性を示すものとして「原子力政策大綱」を決定し、政府は同大綱を原子力政策に関する基本方針として尊重する旨の閣議決定を行いました。 昨今の石油価格の高騰、アジア地域を中心としたエネルギー需要の増大等を踏まえ、安定的で信頼できるエネルギー源の確保を図るとともに、京都議定書の2005年2月発効に伴い、二酸化炭素排出量削減にも寄与するためには、原子力発電を最大限に活用していくことが必要です。 大綱では、原子力の利用を進める上での前提となる基盤的活動の強化として、安全の確保、平和利用、廃棄物処分、人材育成、広聴・広報、立地地域との共生を掲げ、国が積極的な役割を果たすべきであるとしています。原子力委員会においても、原子力政策の策定プロセスにおける市民参加の拡大、原子力政策に対する国民の皆様との信頼関係の確立に努めており、今後とも、原子力に対する国民の皆様との相互理解の一層の促進に全力を尽くしてまいります。 原子力発電については、2030年以降も総発電量の30〜40%以上を担う基幹電源として位置づけるとともに、核燃料サイクルにつきましては、使用済燃料に含まれるプルトニウム、ウランを有効利用するため、再処理を行うことを基本的方針とし、プルサーマルを着実に推進することとしています。 さらに、原子力の研究開発については、「選択と集中」の考え方を基に進めることとし、具体的には、高速増殖炉等の開発を進めるとともに、安全研究、核融合、量子ビームテクノロジー等の基礎・基盤研究の充実を図るべきとしています。 また、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の原子力二法人は、昨年10月に統合され、新たに独立行政法人日本原子力研究開発機構が発足いたしました。新法人は、原子力基本法に定められる我が国唯一の原子力研究開発機関となることから、国際的な中核的拠点となって原子力研究開発利用の促進により一層寄与していくことを期待しています。 我が国が、国民の生活水準の向上や地球温暖化対策への取組等において原子力科学技術の知見や成果を効果的に利用するに当たっては、平和利用、核不拡散の担保、安全の確保、核セキュリティの担保を求めることを大前提としつつ、二国間や多国間、国際機関を通じての情報や経験の交換等の国際協力を進めるべきとしています。我が国が主導しているアジア原子力協力フォーラム(FNCA)をはじめとした枠組みを利用し、アジア諸国における放射線利用や原子力エネルギーの開発利用を円滑に進めていくべく、引き続き政策対話や協力を進めてまいります。 本年も、政府一体となって原子力の研究、開発及び利用に取り組んでまいります。今後の我が国の発展と世界への貢献のためには原子力を担う皆様のお力が不可欠です。皆様の一層のご活躍とご多幸をお祈りしまして新年のご挨拶といたします。 (文部科学大臣の年頭所感は、本紙締切りの都合上、掲載できませんでした) |