[原子力産業新聞] 2006年1月12日 第2314号 <1面>

[経産省] 新増設・リプレースで議論 電力自由化と原子力小委 共同開発も視野に

 経済産業省は10日、東京・霞ヶ関の同省で、総合資源エネルギー調査会の「電力自由化と原子力に関する小委員会(小委員長=田中知東大院教授)」の初会合を開き、電力自由化と原子力発電の現状と課題、新増設、リプレースの実現に向けた主要課題の現状分析および対応策等について資源エネルギー庁から説明を受けるとともに、議論を行った。

 同小委は昨年11月に開かれた第5回原子力部会で設置が決まったもの。2030年以降も原子力シェア30〜40%を目指すとする。原子力政策大綱が閣議決定されたことを受け、電力需要伸び低迷や電力自由化の中で、原子力発電所の新増設やリプレースを円滑に進めるための課題と対応策を検討する。

 経産省は、15基の新規原子力発電所を計画通りに建設した場合でも、2030年以降、着実にリプレースを進めていかなければ、2038年頃には発電電力量で30%となる設備容量5800万kWを下回るおそれがあると指摘。

 一方、計画通り新増設とリプレースを行った場合の電力会社の財務に与えるインパクトについては、各社ごとに大きく異なるものの、年度経常利益の最大0.3から1.8倍と分析、「事業者によっては資金面、収支面の状況が厳しい年度に直面する可能性がある」と警告。しかし、電力会社が50Hz管内3社、60Hz管内6社がそれぞれ共同開発や広域運営を行った場合、財務インパクトは現在の経常利益の各々0.5倍、0.3倍に軽減、電力会社によるアライアンスの必要性をにじませた。

 経産省は、@原子力固有のリスクの低減・分担A広域運営・共同開発の促進B初期投資・廃炉負担の軽減または平準化とリプレース支援C原子力の外部経済性の可視化――の対応策が必要とした。

 委員からは、「適切に制度設計すれば自由化と原子力は矛盾しない。投資リスクは資本市場全体でリスクテイク可能。外部不経済は価格メカニズムで処理すべき」(金本委員)、「原子力シェア目標値は40%のように明確な値にすべき。送電線・連携線の強化が必要」(植草、内藤委員)、「広域運営・共同開発には民間が自主的に取り組む必要がある」(築舘委員)、「電力の自主努力では目標達成は難しい。ギャップをどう埋めるのか政策の有効性を検討すべき」(河野委員)、「ユーザーも入ったアライアンスや新たなビジネスモデルなどが必要」(鶴田委員)、「原子力には系統運用の問題が重要。負荷追従運転の実現を」(横山委員)などの意見が寄せられた。


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