[原子力産業新聞] 2006年1月12日 第2314号 <3面>

[FNCA] ― 人材こそ発展の基盤 ―  FNCA大臣級会合の概要 原子力委員 町 末男

1.連携深まるFNCA諸国

 東アジア諸国の連携の意義が広く議論されつつある中で、FNCA9か国とバングラデシュ(オブザーバー)の大臣クラスが集まり、原子力政策や地域協力の将来を話し合う第6回会合が12月1日に東京で開かれた(=写真)。

 マレーシア、フィリピン、バングラデシュの大臣、中国は国家原子能機構主任、ベトナムは副大臣、韓国は事務次官、インドネシアは官房長、タイの原子力庁長官、オーストラリアはANSTO理事長とトップクラスが参加し、代表演説を行なった。日本からは松田科学技術担当大臣、近藤原子力委員長、齋藤委員長代理、前田委員と筆者らが出席した。

 円卓討議では原子力を発展の有効な手段として効果的に活用するためには、「人材こそが基盤である」との意見で一致し、その育成にFNCAによる各国の連携への期待がのべられた。

 本会合では昨年ベトナムが提案したFNCAのネットワークを活用した人材養成プログラムを踏まえて、各国の専門家が立案した「ANTEP(アジア原子力訓練教育プログラム)構想」が提出された。この構想は各国が有している原子力の専門家、研究、訓練施設、大学の教育などを得意分野で提供し、各国が不足している分野の人材の育成に分かち合うというものである。各国の持つ知的資源を効果的に活用できる方法である。この提案に対し、各国は一致して賛成の意見をのべ、可能な限りの貢献を提供するとともに自国の人材育成に活用したいとの期待を示した。各国は06年1月末までに自国の「提供・貢献できる内容」と「必要としている人材育成の分野・テーマ」について、日本事務局へ連絡し、このデータを踏まえた、より具体的なANTEP構想を、3月のコーディネーター会合で議論し、立案することが合意された。

2.エネルギー安定供給へ原子力発電への価値認識高まる

 マレーシアはこれまで原子力発電は最後の選択肢としていたが、同国のジャマルディン科学技術革新省大臣は、最近の石油高騰を考えると、自国における原子力発電の価値について検討する必要があるとしており、今回自身で日本の原子力発電プラントを視察した。

 中国の新しい国家原子能機構主任・孫勤氏は中国の原子力開発政策は昨年から「積極展開」に転じ2020年までの40GWを達成することを目標としていると強調した。ベトナム、インドネシアは2015〜2020年に1号機導入を目指すことを再度強調していた。化石燃料資源が非常に豊かなオーストラリアの原子力科学技術機構(ANSTO)の理事長スミス氏は、温暖化抑制の観点から「自国の豊富なウラン資源の価値」が再評価され、国会で検討が始まろうとしていると述べた。

 このようにエネルギー安定供給と地球温暖化抑制の観点から原子力発電が必要であることが、発展が急速に進む東アジア諸国で明確に認識されつつある。

 このような状況からFNCAでは、途上国に原子力発電を導入するに際して検討が必要な項目、例えばエネルギー需給の予測、原子力発電のベネフィットとリスク、必要な基盤整備、エネルギーのベストミックスなどについて検討するためのパネルを04年に立ち上げ、06年1月には第2回会合を開催する。この成果が各国の今後の原子力発電政策に有効に反映されると期待される。

3.アジア各国で科学技術政策対話を

 円卓討議「科学技術と原子力」では、原子力研究開発は総合的な科学技術分野であると同時に、新材料、バイオなどの先端分野に有用な手段と情報を提供する重要なものであり、それらの分野との良い連携が国の発展に役立つことが認識された。

 これと関連して、松田大臣は今後アジア諸国の科学技術政策担当大臣による政策対話が重要であることを指摘し、多くの代表が賛成の意向を表明した。

 これによってFNCAが開いたアジアの原子力協力が広く科学技術協力に拡大していく可能性が出てきた。

4.バングラデシュFNCA参加希望表明

 バングラデシュは数年前から参加の希望を表明していたが、今回カーン科学・情報・通信技術省大臣がオブザーバー参加し、FNCAに対する期待と参加希望を正式に表明した。

 大臣は同国が研究炉、加速器、Co−60照射施設を有し、原子力研究開発を活発に進めていることから、FNCAに対して積極的貢献が出来るとのべ、これに対し各国代表が歓迎の拍手を送った。


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