[原子力産業新聞] 2006年2月2日 第2317号 <3面> |
[米国] Wストリート、原子力に注目 メリルリンチ 「原子力所有は有利」米ウォール・ストリートの大手3社が、原子力発電事業のリスクと利益について調査を行った。 米大手証券メリルリンチは、大気の汚染防止規制が一層厳格になるため、大気への排出物のない原子力発電所の株式を所有する電力会社は、2010年まで利益を上げられるとしている。運転コストが安定しており、クリーンエアの遵守コストが低いため、原子力発電所は他の発電源より有利とする。 エナジー・ベロシティおよびEUCG社は、各種電源による発電コスト調査を行った。それによると、2004年に原子力発電の発電コストはkWhあたり1.7セント、石炭火力は1.9セント、ガス火力は5.9セントだった。 一方、企業等の信用格付けを行っているスタンダード&プアーズ(S&P)社は、1月9日付の原子力事業に関する信用報告書の中で、原子力事業には運転、規制、環境のリスクがあるため、原子力発電所を所有することは「信用向上の要素とはならない傾向がある」と指摘した。 S&Pは、カナダ、欧州、米国の原子力産業界を左右する要因を、原子力発電所所有権の集中、市場規制の程度、廃止措置、産業界のトレンドなどを含め、調査を行った。 それによると、米国では包括的エネルギー法案の通過により、新規原子力発電所建設への関心が復活。カナダではオンタリオ州で電力需給ギャップを埋めるという具体的かつ緊急の必要性を反映して、既存原子力発電所の改良が行われた。また欧州では、天然ガス価格の高騰、海外エネルギーへの依存の懸念、二酸化炭素割当価格の上昇などにより、原子力発電に明るい見通しが出てきたという。 S&Pは、確実な運転を行い健全で安定した財務運営を示す原子力事業者と、財務成績を損なう可能性のある問題を持つ可能性のある原子力事業者とを区別する作業を行っている。原子力事業者を「標準以下、平均、優秀」へ分類に用いる解析ツールの改良・強化など、財務リスク評価法の改良を目指している。 |