[原子力産業新聞] 2006年2月16日 第2319号 <1面>

[東芝] 「世界狙う絶好のチャンス」WH社買収で西田社長語る

 東芝は既報の通り、英国原子燃料会社(BNFL)からウェスチングハウス(WH)社を買収する契約に調印した。今後、米英両国の行政許認可を受け、今秋には正式に世界最大規模の新しい原子力発電プラント供給グループが発足する見通し。東芝はこれまでBWRで国内22基の建設実績を有し、現在、台湾でも龍門1、2号機を共同で建設中。積極的な買収条件の提示について、「東芝の原子力事業の高いポテンシャルを世界市場において展開する絶好の機会。市場でリーダーシップを取れると確信している」(西田厚聰社長)とした。

 54億ドルという買収金額は、他の応札企業にとって予想以上のレベル。今回の買収にかける東芝の強い意志がうかがわれる。

 世界的なエネルギーセキュリティー重視の動きや地球温暖化防止などを背景に、原子力に対する見直しが急速に高まっており、プラント市場も大きな成長が期待できると判断。BWR事業にPWR事業を加えることが今後の事業展開を進める上で極めて有利であり、必要不可欠と判断した。東芝単独の投資は3000億円前後になる見通しだが、「今回の投資は15年から20年で回収できる」(同)とした。

 東芝は世界エネルギー見通し(IEO)2004を基に、2020年までに世界で約130基(1基当たり1GW換算)の原子力プラントが新増設されると予測する。アジア68基、北米・南米14基、東欧・ロシア27基、欧州17基など。これにともない保全サービス、燃料、建設などを含めた世界の原子力市場は、現在の6兆円から2020年に9兆円に拡大すると予測。年平均の建設ペースは同じく3基から10基に拡大していると見る。

 こうした中で、東芝を中核とする新しい事業グループは、「2015年に7000億円以上の事業規模を目指す」(同)。現在、東芝とWH社の原子力事業規模はともに2000億円程度であるため、10年後にほぼ2倍の規模にする計画。東芝としては同事業を現在の3.5倍以上の規模に拡大することになる。プラント建設事業ではAP1000の拡販活動を米国と中国中心にアジアで展開、保全サービスと燃料供給事業は米国と欧州で拡大する。2015年での海外事業増大分として、米国で建設18億ドルプラス保全・燃料5億ドル、中国で建設3億ドル、欧州で保全・燃料2億ドルなどを想定。

 WH社はこれまで原子力発電プラント98基(PWR88基、BWR10基)の建設実績を持ち、販売・技術拠点は米国18か所、欧州11か所、アジア5か所を有する。東芝と合わせた販売拠点は世界14か国で34か所。両社合わせた現有原子力発電設備容量(384GW)でのシェアは28%と世界ナンバーワンになる。「PWRとBWRの両方式に対応できるニューグローバルリーダーとして販売、設計、製造の全てにおいてシナジー効果を発揮させる」(同)との事業戦略に注目が集まる。


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