[原子力産業新聞] 2006年3月9日 第2322号 <3面>

[米国・インド] ブッシュ米大統領が訪印 原子力で共同声明 原子力発電で化石燃料価格を抑制

 1日からインドを公式訪問していたブッシュ米大統領は2日、インドのシン首相との間で、米・印原子力協力を含む共同声明を発表した。

 共同声明は「エネルギー・セキュリティとクリーンな環境」の章の中で、「インドの(民生用と軍事用原子力計画の)分離計画に関する議論の決着を歓迎し、2005年7月18日の原子力協力に関する共同声明の完全な実施に期待を寄せる。この歴史的な功績により、全面的な民生用原子力エネルギー協力という共通目的に向けて、米国とインド両国、及び国際社会全体が動き出すことができる」と総括。さらに、インドの国際熱核融合実験炉(ITER)参加を歓迎すると述べている。

 ブッシュ大統領は3日夜、ニューデリー市内の世界遺産プラナ・キーラで演説(=写真)。米国とインドがエネルギー分野で重要な協力ができるとし、インドの高い経済成長により伸び続ける電力需要を満たすために、「もっとも明らかに信頼性が高い方法は、原子力発電だ」と述べた。

 同大統領は、インドの原子力発電計画に、世界の最も進んだ技術と国際基準を適用することによって、安全性を向上し、核拡散リスクを減らすことができると強調。インドの原子力発電拡大に協力することで、「化石燃料の価格上昇への圧力を軽減し、インドが環境を保護することを助け、両国の信頼の絆を深めることができる」と述べた。

 米印両国は昨年7月、原子力分野で全面協力することで合意、インド側は、国際的な核不拡散体制の遵守を約束した。インドは、民間用と軍事用の原子力施設・計画の分離、民間用施設のIAEAへの申告と保障措置の適用、保障措置追加議定書への加盟、核実験モラトリアムの実施、カットオフ条約成立への協力、再処理・濃縮技術の移転自粛などを約束した。

 これに対して米国は、同国を始め先進国とインドが、全面的な原子力協力や原子力通商が可能になるよう働きかけるとともに、インドのITERやGEN―Wへの加盟など、インドを国際原子力社会に迎えるための働きかけなどを約束していた。

 インドは昨年の国際原子力機関(IAEA)総会等で、2020年までに原子力発電容量を2,000万kWへと拡大する計画を発表しているが、同国の国産加圧重水炉は20万kW程度と小型なため、目標を達成するためには先進国からの大型軽水炉の導入が不可欠だ。


Copyright (C) 2005 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.