[原子力産業新聞] 2006年3月23日 第2324号 <3面> |
[遠藤哲也氏(前原子力委員長代理)寄稿] 米GNEP 日本はいかに対応すべきか去る2月6日に発表された「国際エネルギー・パートナーシップ」(GNEP)は、米国原子力政策の画期的な転換を示している。ワンス・スルー政策からの30年ぶりの離脱であり、再処理、高速炉を軸とするサイクル路線への大転換である。 この政策の転換には2つの背景があった。その1つは廃棄物処分であり、今1つは核不拡散問題である。 前者は、ユッカ・マウンテン計画が予定どおり進まず、加えて使用済み燃料をそのまま処分するのでは、今後ともユッカ・マウンテン級の処分場を引続いて建設する必要があるが、これは現実的にとうてい無理なことが次第に判明し、従って廃棄物の大幅な減容が焦眉の急となって来た。 後者は、核不拡散を巡る状況の変化である。核開発の前駆である濃縮と再処理はもはや「高嶺の花」でなくなり、これに対し何らかの国際的な規制をかけるべしとの声が強くなり、GNEPはそれに答えるものである。 GNEPは、原子力発電国を「核燃料サイクル国」(パートナーシップ国=とりあえず米英日仏中露の6か国)と、その他の「単なる原子力発電国」の2つのカテゴリーに分ける。前者はプルトニウムを単体抽出しない先進的再処理、およびプルトニウムとアクチナイドを燃やす高速炉を協力して開発する。後者は濃縮、再処理を放棄する代りにパートナーシップ国から燃料供給の保証を受けるというものである。 それでは、このGNEP構想に関し、日本は何を求められ、また、日本として如何に対応していくべきだろうか。 米国がGNEPで描く原子力の将来像は、サイクル国として日本がこれまで一貫して追求して来たものと重なっている。米国の政策転換によって、核燃料サイクル路線は名実ともに世界の主流に位置するようになり、わが国としてもGNEPに積極的に(ギブ・アンド・テイクの姿勢で)対応していくべきであろう。 米国が日本に期待するものとしては、資金と技術だが、前者はともかく、後者では、@アクチナイド回収のための再処理技術A高速炉燃料再処理技術Bナトリウム冷却高速炉技術C大規模なサイクルに係る保障措置――などがあげられる。 いずれにせよ、日米、日仏間、パートナーシップ国会合で十分に話合い、日本としての提案項目を絞りこんでいく必要がある。 このようにわが国はGNEPに賛成だが、この構想には明らかにしていくべき点がある。それらを順不同で例示してみたい。 ▽GNEPは原子力発電国を二分する、つまり不平等性の導入だが、この構想はパートナーシップ国以外の国、特に韓国、カナダ、ブラジル、アルゼンチン等のすでに相当程度の原子力技術をもっている国に、NPT第4条との関連もあり、どのように受けとめられるか。商用規模の濃縮、再処理は認められないとしても、中間措置として研究規模のものは認められるのか。 ▽エルバラダイ氏の国際核管理構想とGNEPは目指すところは同じだが、両者は方法論に於いて大きな違いがあるところ、GNEPに対するIAEAの反応如何。 ▽燃料供給保証スキームは、これまでも1970年代後半のINFCEとか80年代のIAEAのCASで取り上げられたが、結論を得ないままに終わっている。GNEPの下での燃料供給保証はどのようなスキームになるのだろうか。エルバラダイ構想の下でのスキームとはどう違うのか。 ▽燃料供給スキームは、経済的メリットを与えて参加を勧奨するというものだが、核開発を決意した国(確信犯的な国)にとっては、経済メリットは何の魅力もなく、このスキーム自体、核不拡散の観点からはあまり大きな効果は期待できないのではないか。 ▽高速炉で長寿命核種を100%燃やすことは不可能なので、どうしても残る高レベル廃棄物をどこの国が面倒を見るのか。 ▽わが国の原子力利用は、日米原子力協定を基礎にしているが、GNEP参加と日米協定との関係如何。特に再処理に対する事前包括同意については如何。(第2再処理工場は) ▽わが国がGNEPに参加した場合、パートナーシップ国の間での協力は一層推進されようが、その他の国への燃料供給保証において、特にアジア諸国に対してどのような協力が考えられるか。 ▽将来、米国に民主党政権が設立した場合、GNEPはどのような影響を受けようか。少なくとも廃棄物処理について、民主党はどのような現実的な対応策を持っているのか。(了) |