[原子力産業新聞] 2006年4月6日 第2326号 <3面> |
― 中国の第11次5か年規画 ―100万kW・PWR国産化など 原子力積極推進に転換中国の電力設備の伸びは、2004年が5,050万kW、2005年が東京電力1社分の6,500万kWという、驚異的な伸びを示している。2020年には、現在の約5億kW(日本は2億kW)の2倍となる約10億kGWとなる計画が立てられている。 原子力発電所の開発方針についても、第10次5か年計画の「適度に開発」から、今回の第11次5か年規画(「計画」から名称変更)では積極開発方針に転換し、原子力3,000万kWを増設する計画である。この背景には、現在運転中の原子力発電所9基・700万kWが、九〇%前後の高設備利用率を達成、順調に稼動していることがある。うち2基は既に借入金の返済を終え、大きな収益を挙げている。建設中は4基3,600万kW。2020年の予測値は、石炭火力5億8,000万kW、水力2億3,000万kW、ガス8,000万kW、石油1,500万kW、原子力4,000万kW、再生可能エネルギー3,000万kWとしている。 中国の原子力発電開発は原則PWR。海外技術・資金導入路線と、国産化路線の2路線を採ってきた。国産化路線では、秦山T期30万kWと秦山U期60万kWの国産化を達成し、現在100万kWの国産化を進めている段階(嶺墺U期100万kW)。 海外からの導入については、第2世代炉のフランス製100万kW級・PWRを大亜湾と嶺澳、カナダ製CANDUを秦山V期、ロシア製VVERを田湾にそれぞれ導入、今後、第3世代炉の導入段階にある。 核燃料サイクルは自給を原則に進めて来たが、原子力発電の大増強により、自前のウラン資源や濃縮、成型加工が供給能力不足になりつつあり、オーストラリアからのウラン輸入を交渉中である。また濃縮ウランも欧州のウレンコから輸入し、加工設備を増強している。 低レベル廃棄物の処分場は、既に大亜湾発電所の隣接地に北龍処分場、ゴビ砂漠の酒泉再処理工場隣接の西北処分場がある。高レベル廃棄物処分は現在、ゴビ砂漠の北山地域で立地の絞込み調査が行われており、今後、立地の確定、地下研究所の建設、処分実証、処分場建設が予定されている。 11次・5か年規画では、今後の原子力発電所の開発の重点を、@100万kW級原子力発電所の建設A先進型PWRの設計・製造・建設・運転の段階的国産化B核燃料資源の探査・採掘・加工技術の改善C原子力発電の核心技術の開発D原子力発電人材の養成強化E中低レベル放射性廃棄物処分場の建設G高レベル放射性廃棄物処分問題の解決――としている。 核工業集団公司によれば、今後の開発は、@秦山U期と嶺墺の複製建設(着工済み)A第3世代炉AP1000、EPR等の海外からの導入(入札済み審査中)B100万kW改良型第2世代PWR(CNP1000)による国産標準化――の3方針で臨むとしている。 また第4世代炉のハイテク技術開発では、高温ガス炉が2003年から発電を開始、2004年には水素製造開発で韓国と協定を締結した。20万kWの集合型高温ガス炉商業モデル炉を、2010年から発電開始する契約も締結している。高速炉では、実験炉を北京の原子能科学研究院で建設中であり、2009年臨界を予定している。 原子力発電の人材も大幅な増強が必要になっており、清華大学、上海交通大学、西安交通大学、北京大学、ハルピン工科大学や原子能科学研究院で、原子力発電所運転員の契約養成や会社幹部の再教育が行われている。 今回の第11次5か年規画では、「国家中長期科学技術発展計画」の重大特定プロジェクトとして、@100万kW級大型先進PWRの設計技術開発A20万kW級高温ガス冷却炉商業化技術開発――を明記。先進技術開発として、第4世代原子力システムと核燃料サイクル、核融合エネルギーに注目。さらに、@水素エネルギーの大規模利用A65MW高速炉実験炉の臨界と電力網接続の実現BITERの建設・研究参加と実証炉の重要材料開発等を重点研究――するとしている。 (永崎隆雄・日中科学技術交流協会理事) |