[原子力産業新聞] 2006年4月13日 第2327号 <1面>

安全委・耐震分科会 耐震指針改訂で取りまとめ案 基準地震動を一つに

 原子力安全委員会の耐震指針検討分科会は7日、耐震設計審査指針の改訂に関する報告書案を審議、この改訂案を概ね固めた。次回28日の会合で、分科会としての報告をまとめる運び。新指針では、従来S1とS2の2種類に区分していた基準地震動をSsとして統合、新たに弾性設計用地震動Sdを設定する。

 現行耐震指針は一部改訂を除き、81年の策定から25年を経過。地震学・地震工学、耐震設計技術の進歩、95年の兵庫県南部地震の経験などに対応するため、同分科会は01年より審議を重ねてきた。

 現行指針では基準地震動について、施設の建物、構築物等の重要度に相応し、設計用最強地震S1と設計用限界地震S2の2種類に区分しているが、改訂案では両者を統合。高度化した考え方に基づいて、基準地震動Ssのみを策定する。地震学・地震工学的見地からのSsと合わせ、工学的判断に基づく弾性設計用地震動Sdを設定、従来S1の耐震設計上の役割を補う。

 耐震設計上の重要度分類も、現行指針に定めるAクラス全体を「特に重要な施設Asクラス」扱いとして一本化した。さらに従来のA、B、Cクラスを新指針では、それぞれ耐震クラスT、U、Vと呼称を改めた。

 これまで規定されていなかった地震随伴事象は、施設周辺斜面の崩壊と津波を掲げ、それらにより安全機能が重大な影響を受ける恐れがないよう考慮して設計すべきと明記した。

 多くの審議時間を費やしたいわゆる「残余のリスク」(策定された地震動を上回る地震動の影響が施設に及び施設の重大な損傷事象が発生するリスク等)は、「策定された地震動を上回る地震動が生起する可能性に対する適切な考慮を払い、基本設計の段階のみならず、それ以降の段階も含めて、この『残余のリスク』の存在を十分認識しつつ、それを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべき」との記述を基本方針の箇所に加えた。


Copyright (C) 2005 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.