[原子力産業新聞] 2006年4月20日 第2328号 <4面>

陽子線がん治療装置を小型・低価格に 原子力機構が加速技術開発

日本原子力研究開発機構はこのほど、陽子線がん治療装置を大幅に小型・低価格化できる陽子加速技術を開発(=図)した。レーザー光をターゲットに照射することにより発生する陽子の最大エネルギーを予測できるシミュレーション技術を開発、レーザーパルスと薄膜ターゲットの条件を最適化した。今後、医学界と連携し、小型レーザー駆動がん治療装置の開発を進める。

世界的に大出力レーザーを利用した陽子の加速実験が行われているが、これまで実験的な要素が強く、陽子の最大エネルギーとレーザー条件やターゲットデザインなどの体系的な解析は未整備であった。今回、原子力機構は最適条件を見つけるためのマルチパラメトリックシミュレーションが可能なプログラムを開発、スパコンによる克明な解析を実施した。

このシミュレーションにより、レーザーパルスと陽子の発生源となる薄膜ターゲットとの条件を選定。従来予想に比べ低いレーザー強度で深部がん治療に必要な200MeV領域の陽子エネルギーを作り出せる可能性を見出した。解析に使用したターゲットは2重層タイプで、これにサブピコ秒パルス幅のペタワットレーザー照射により、200MeV級の陽子加速が可能という。

今後、ターゲット形状などの条件を検討、より合理的なレーザー仕様を求めていく方針。


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