[原子力産業新聞] 2006年5月11日 第2330号 <3面>

【第39回原産年次大会 開会セッション 直面の課題を概観】

第39回原産年次大会は4月26日から28日まで、パシフィコ横浜で開催された。初日午後からの開会セッションでは、西澤潤一原産協会会長(2面に会長所信)、松あきら経済産業副大臣が所感を述べ、森口泰孝文部科学省研究開発局長、塩沢文朗内閣府官房審議官が各大臣所感を紹介、各氏は日本が直面するさまざまな課題について概観し、あるべき方向性を明確に指し示した。

松副大臣 国家戦略に反映へ 原子力積極取組み

原子力発電の推進には、安全の確保と、立地地域を始めとする国民の理解を得ることが何よりも重要だ。

一昨年の8月9日、福井県の美浜原発3号機で、痛ましい事故が起こった。私も3日後に事故現場に足を運び、国会議員の一人として真摯に反省し、このような事故を二度と起こしてはならないと心に深く誓った。

経済産業省としては将来に向けて、@電力自由化の中での原子力発電の新増設の実現A技術や人材の確保B我が国原子力産業の国際展開C国際的な産業再編の流れの中での原子力産業の競争力強化策D核不拡散と原子力平和利用の両立のための我が国の対応策――などの課題について、検討を進めている。

現在検討中の「新国家エネルギー戦略」に、燃料サイクルを含む原子力発電を大きな柱と位置づけ、これらの検討の結果を反映させていきたい。

文部科学省 研究開発は着実に推進

文部科学省では、原子力政策大綱の策定を受けて具体的な推進方策を議論しており、今後とも安全確保を大前提に、立地地域をはじめとする国民の理解と協力を得つつ、原子力の研究開発を着実に推進していく。

特に、高速増殖炉サイクル技術の確立は、我が国の長期的なエネルギーの安定供給に大きく貢献するものであり、総合科学技術会議が定めた分野別推進戦略においても国家基幹技術として位置付けられた。米国が発表した国際原子力エネルギー・パートナーシップ構想でも、世界的にもその重要性が再評価され、この中でも高速増殖原型炉「もんじゅ」は、極めて重要な役割を果たすものであり、早期の運転再開に向けて、現在、改造工事を進めている。

本年4月1日には東京で開かれた政府間協議で、ITER計画のための国際協定について、実質的合意に達した。我が国では、ITER計画と並行して、先進的な核融合研究を日欧協力により実施する。これにより、我が国に、国際的な核融合研究の一大拠点が形成されるようしっかりと取り組んでいく。

内閣府 各省連携しことに対応

昨年10月に原子力委員会は原子力政策大綱を決定し、政府は本大綱を原子力政策に関する基本方針として尊重する旨、閣議決定した。

放射性廃棄物の安全な処分は、私たち現世代が有している未来世代に対する責務であり、個々の放射性廃棄物の性状等に応じて、処理・処分を適切に行うことが必要だ。処分候補地の公募中だが、核燃料サイクルの確立のためには避けては通れないプロセスであり、政府としても引き続き、立地地域の住民はもとより、原子力発電の便益を受ける電力消費者などの理解と協力が得られるよう、広聴・広報活動等の取組を強化していく。

国や事業者等が、国民や地域社会が知りたい情報は何か、「原子力をどう考えているのか、それはなぜなのか」を知るための広聴活動を出発点として、多面的な理解促進活動を引き続き行う。

07年頃から始まる団塊世代の退職に伴い、熟練技術者が減少するが、原子力分野でも同様であり、30年頃から始まる原子炉の更新等に備えて、将来を担う技術者・研究者の育成や技術の継承への対応が喫緊の課題としてあげられる。各事業者や研究機関において、原子力分野の職場を魅力のあるものにするなどにより、人材の育成・確保に向けて取り組むことが重要だ。

経済産業省、文部科学省など関係各省と緊密に連携しつつ、政府一体となって、安全の確保を大前提に原子力の研究、開発及び利用を進めていきたいと考えている。


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