[原子力産業新聞] 2006年5月18日 第2331号 <2面> |
長時間運転へ前進 プラズマ閉じ込め JT−60が28秒間 ITER目標に見通し日本原子力研究開発機構はこのほど臨界プラズマ実験装置(JT―60)により、国際熱核融合実験炉(ITER)に必要なプラズマ状態を従来比1.7倍の28秒間維持することに成功した。 真空容器内にフェライト鋼を設置、プラズマを閉じ込めるトロイダル磁場の強弱の度合い(磁場リップル)を従来比約4分の1に低減。磁場が弱い部分でプラズマを加熱する高速イオンが逃げるという課題を克服し、長時間維持に成功した。この際のプラズマの中心温度は約6,000万度Cという。 フェライト鋼は長さ・幅15cm程度、厚さ2cmのタイル形状で、従来の炭素材タイルの一部を取り外し、約1,100枚取り付けた。 これにより高速イオンの損失量をほぼ半減、閉じ込め性能が20%改善したため、同じ圧力のプラズマを20%低い加熱パワーで得られる。 同機構では、今回の成果はITERの技術目標達成への見通しをより確実にするものとしている。 同目標はエネルギー増倍率(核融合出力と外部加熱入力の比)10以上の高温・高密度プラズマの長時間維持。核融合出力は、プラズマ圧力(温度×密度)の2乗に比例するため、目標達成のためにはプラズマ圧力を高めるとともに、閉じ込め性能を高く保ち外部加熱入力を低減する必要がある。プラズマ圧力は、磁場やプラズマ電流に対する圧力である規格化プラズマ圧力という指標が使用され、ITERでは1.8。閉じ込め性能は、計算値との比較である閉じ込め改善度という指標が使用され、同じく1。両指標の積である1.8がITERの標準運転目標となっている。 |