[原子力産業新聞] 2006年5月18日 第2331号 <4面>

原子力機構等 ウラン化合物の電子状態観測 世界初、理論的解明

日本原子力研究開発機構、東京大学、京都産業大学、大阪大学はこのほど、共同で大型放射光施設SPring―8を用い、世界で初めて、ウラン化合物の電子状態の直接観測とその理論的解釈に成功した。

ウラン化合物は超伝導や複雑な磁性など多様な物性を示すが、今回の成果はこうした物性の理解を推進し、長年の謎である物質の超伝導機構の解明につながるという。

観測はウラン鉄ガリウム5を用い、角度分解光電子分光実験により行った。同分光法は放射光の照射にともない、試料表面から放出される光電子の個数とエネルギーの関係を調べることが可能で、これにより物性を決定している5f電子のバンド構造とフェルミ面を直接的に得た。結果は、相対論的バンド理論によって非常に良く説明できるという。

ウラン化合物は放射性のため取扱いが困難、同分光法も非常に高い実験精度が必要だが、世界トップクラスの光強度とエネルギー分解能を有し、放射性物質も扱える原子力機構専用ビームラインにより実現した。


Copyright (C) 2006 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.