[原子力産業新聞] 2006年5月25日 第2332号 <3面>

アナン事務総長が東大で講演 核拡散の危機を訴える

日本を訪問中の国連のアナン事務総長は18日、東京大学で講演し(=写真)、「世界は核拡散という危機に対処しなければならない」と警告した。同氏は、世界では、ますます多くの国々が核兵器を獲得しようとしており、過激派でさえ核テロを行う手段を求めていると指摘。国際社会が二度にわたって、核拡散防止条約(NPT)の強化に失敗したと批判した。

また、核兵器開発が懸念されている北朝鮮とイランについては、「理性的で粘り強い」外交によって問題を解決するよう求めた。

アナン氏は、「我々は、交差点に差しかかっているように思える」と指摘。「1つの道は、核兵器の拡散が押さえられ、核兵器が減って行く道につながっている。信頼、対話と交渉によって合意が達成され、国際的な平和目的の核燃料供給保証が行われ、その結果、開発と経済繁栄がもたらされる」とした。「もう片方の道は、多くの国々が核兵器で武装する必要に駆られ、非国家主体が核テロを行う手段を獲得する世界につながっている」と述べた。

アナン事務総長は、国の偉大さのためには、核兵器が必要ないという好例として日本を挙げ、「核兵器を製造・所持しないという制約を自ら課しながら、日本が国として大成功を納めてきたことは、世界に強力なメッセージを送っている」と日本の努力を称賛した。


Copyright (C) 2006 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.