[原子力産業新聞] 2006年5月25日 第2332号 <3面> |
WHO、発がん予測を改訂 チェルノブイリの健康影響 「理論的な数値」と記述【キエフ松木良夫】世界保健機関(WHO)は、4月24日から26日にウクライナのキエフで開催された国際会議「チェルノブイリ事故後20年、将来の展望(フューチャー・アウトルック)」で、同事故によるがんの統計的な予測発生数を発表した。 これは、昨年9月にウイーンで開催された国際会議で、チェルノブイリ・フォーラム報告書の一部として、すでに同機関が発表した内容と基本的には同じもの。ただし、4月のキエフでの国際会議と期を同じくして改訂された同フォーラム報告書の要約版「チェルノブイリの遺恨(レガシー)− 健康、環境および社会経済的影響」では、WHOの担当した部分の表現が一部変更された。 昨年9月に発表された際には、「チェルノブイリ事故に起因する放射線を生涯にわたり被ばくしたために既に死亡した可能性があるか、もしくは将来死亡する可能性のある人々の合計数は、事故回収処理作業者とほとんどの放射能汚染地域居住者を合せて、約4,000人程度と推定される」との記述があった。 今回の改訂版では、以下のような記述となった。 「無視できない放射線被ばくを受けた(1986年から1987年に従事した)事故処理作業者、避難した住民、ならびに最も汚染された区域の住民の合計60万人については、被ばくに起因するがんによる死亡率が、数%上昇する可能性があると国際的な専門家グループは予測している。このことは、結果として次のことを表しているかもしれない。すなわち、この同じ数の集団からは、諸々の原因により、(チェルノブイリ事故に関わらず)約10万人に致死性のがんの発生が予測されるが、これに加え、(同事故に起因する)放射線の被ばくにより、4,000人程度に致死性のがんが発生する可能性がある。その他の汚染地域に居住する500万人については、被ばく線量は極めて低く、事故による放射能汚染に起因する致死性がん発生数のいかなる増加予測も、純粋に理論的なものに過ぎない。(計算では)通常発生する致死性がんの数に加え、その1%以下の致死性がんの数が事故により増加する」。 一方、同じく4月、WHOはニュース発表の中で、上の4,000人に加え、その他の放射能汚染地域住民500万人からの致死性がん発生予測値5,000人を加え、合計で「最高9,000人」の致死がん発生が予測されると記述した。このことは、一般公衆が原子力施設から受ける被ばく線量の年間限度である年間1ミリシーベルト以下を被ばくする、低いレベルの汚染地域の居住者についての計算上の発がん発生数を加えたことを意味している。 |