[原子力産業新聞] 2006年6月1日 第2333号 <4面> |
「飛躍の軌跡・核融合――新しい技術を生み出した人びとの経験」太田 充著(元原研那珂研所長)新しい技術を生み出す源は、「技術者の資質か?運か?はたまた情熱か?」と問われて、あなたは何と答えるか。 この本は著者自らが言うように、核融合の研究開発の世界で、「数々の失敗と挫折を繰り返しながら、情熱をかけて新しい技術を生み出した技術者たちの物語」――だ。 これから科学技術を志す若い研究者、技術者にぜひ読んでほしいと願う。 日米欧・旧ソ連としのぎをけずってきた究極の最先端科学技術・核融合。長い間、「夢のエネルギー」と言われながら、目標実現は蜃気楼のように後ずさりしていった。そんな中で、核融合研究の現場での研究者・技術者の栄光と苦闘の姿を浮き彫りにする。 核融合開発に不可欠な要素技術である高速粒子ビーム、超伝導磁石、大電力供給源、超高真空、構造材料、トリチウム燃料の製造などに焦点を当てる。研究論文や新聞記事ではわからない、現場にはドラマがある。 いくつかの研究事例を挙げて、著者は「努力なくして成功なし」「努力は人を裏切らない」などの言葉に、「努力は運を呼び込む」という言葉も付け加えたい、とも言う。話は研究職だけでなく、機器メーカーの研究者、製造現場の人々にまで及ぶ。 核融合実現に向けて、時代の流れも、予算配分のありようも大きな影響を与えはするが、「最後は人」、「人と人との信頼」そんな結論が浮かび上がってくる『物語』に仕上がっている。 ERC出版、1,575円(税込み)。 |