[原子力産業新聞] 2006年6月15日 第2335号 <4面>

「生活習慣も考慮すべき」 放影協 放射線疫学調査報告

放射線影響協会は12日、国立がんセンター(東京・中央区)で放射線疫学調査講演会を開催、このほど同協会が文部科学省委託で調査結果をとりまとめた「原子力発電施設等放射線業務従事者等に係わる疫学的調査」を報告し、放射線被ばくによる発がんリスクについて議論した。

放影協は90年度より、発電所などの放射線業務従事者を対象に、低線量放射線被ばくの健康影響について調査を実施しているが、この2月に、00〜04年度の「第V期調査」結果が公表された。それによると、一部の消化器がんでは、被ばく線量の増加に伴い死亡率が増加するという、統計的に有意な関連が認められたものの、低線量放射線ががん死亡率に影響を及ぼしているという証拠は見られなかった。しかしながら、他要因に基づく「交絡因子」が解析結果に影響を及ぼしている可能性も推測されることから、今回調査では、従事者の生死追跡とは別に生活習慣に関する調査も行っている。

本講演会ではまず、祖父江友孝・国立がんセンター情報研究部長が、疫学研究で注意すべき要因として、「偶然」、「バイアス」、「交絡」を掲げた上、特に大規模研究での交絡因子に関する情報収集は、コスト、データの質確保から難しいと述べた。

「第V期調査」での交絡因子調査について、巽紘一・放影協放射線疫学センター長は、2回にわたる生活習慣等アンケートの結果を紹介した。その中で、「高線量群ほど、喫煙率が高く、喫煙本数の多い人の比率も高い」、「1日平均飲酒量別で1〜3合/日の飲酒者の比率が、累積線量とともに有意の増加傾向」などが示唆されたため、飲酒、喫煙がリスクを高める食道がんの死亡率の線量依存傾向性を解釈する場合、特に考慮すべきと分析している。

また、水野正一・東京都老人総合研究所研究員は、15か国約40万人を対象とした、WHO付属の国際がん研究機関による低線量放射線被ばく多国籍共同研究の経緯を披露、詳細報告はまだ準備中だが、国によって死亡率に社会経済階層との関連もみられることから、解析に際し考慮されていることがあげられた。

これらに対して、「現場では作業者の被ばくを低減するよう最大の努力を払っており、データは慎重に扱って欲しい」といった事業者からの意見があった。


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