[原子力産業新聞] 2006年6月22日 第2336号 <1面>

原子力部会報告まとまる 関連産業の国際展開を支援
コミュニケーション強化へ協議の場も

経済産業省は16日、総合資源エネルギー調査会の原子力部会を開催、事務局が同部会報告書を説明、議論を行った。今後、1か月間程度、パブリックコメントに付された後、次回8月8日の同部会で最終決定する。

部会報告書は、5月30日の前回部会で示された骨子案を肉付けしたもので、@原子力政策立案に当たっての5つの基本方針A原子力を巡る時代環境B現状・課題と今後の対応――の3部構成。

報告書は、我が国の原子力産業の国際展開を支援する政策として、@政府の積極的な支援意思の表明A相手国との対話の強化B人材育成への協力C国際機関のレビュー調査への積極的参加D公的金融の活用E導入国における制度整備への支援F二国間協力協定等の枠組み作りG原子力のCDM、JIへの組み入れH輸出管理・輸出信用付与手続きに係わる柔軟な運用I官民連携の場の設定J学の協力関係の拡大――を列挙。

日本からの原子炉等輸出を官民が一体となって効率的に進めるため、政府と民間が方針や役割分担などについて協議する場を設け、コミュニケーションを強化すべきだとしている。一方、「公的金融の活用」については、現在、政府内で政策金融の在り方が議論されており、米国への輸出を念頭に置いた原子力部会での議論からは、やや後退した表現となっている。

委員から報告書に関して、「原子力の役割の確信に基づいたもの」(秋元委員)と、高く評価する意見が出されたが、「個々の政策が進まなければ、全体が絵に描いた餅になる」(河野委員)との懸念、また進まない高レベル廃棄物処分場立地に対する懸念も出された。

報告書第1部「原子力政策立案に当たっての5つの基本方針」では、@「中長期的にブレない」確固たる国家戦略と政策枠組みの確立A個々の施策や具体的時期については国際情勢や技術の動向等に応じた「戦略的柔軟さ」を保持B国、電気事業者、メーカー間の建設的協力関係を深化、関係者間の真のコミュニケーションを実現し、ビジョンを共有、まずは国が大きな方向性を示して最初の第一歩を踏み出すC国家戦略に沿った「個別地域施策」の重視D「開かれた公平な議論」に基づく政策決定による政策の安定性の確保――を提示。

メインとなる第3部「現状・課題と今後の対応」では、@現行水準以上の原子力発電比率の中長期的な実現に向けた取組A核燃料サイクルの着実な推進とサイクル関連産業の戦略的強化B高速増殖炉サイクルの早期実用化C技術・産業・人材の厚みの確保・発展D我が国原子力産業の国際展開支援E原子力発電拡大と核不拡散の両立に向けた国際的な枠組み作りへの積極的関与F原子力と国民・地域社会との共生G放射性廃棄物対策の着実な推進――の各章において、個別政策を示している。


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