[原子力産業新聞] 2006年7月13日 第2339号 <3面>

原子力発電所の大規模なリプレースを想定 ブレア政権、エネルギー政策を転換
新規建設を促進するため、事業リスク低減へ

英国政府は11日、エネルギーに関する政策方針を発表。化石燃料の高騰による原子力発電の経済性向上や地球温暖化対策に果たす役割を再認識し、3年前に発表した再生可能エネルギー頼みのエネルギー政策から、原子力発電所の新規建設も含む現実的なエネルギー政策へ、大幅に路線を修正した。正式なエネルギー白書は、これらを踏まえ、来年初頭をメドに策定される。

政府は、@欧州連合の温暖化防止対策に従い、800万kW分の石炭火力(既存の石炭火力設備の約3分の1)が2015年までに閉鎖されるA1,000万kW分の原子力発電所が2023年までに閉鎖される――などから、将来の電力需給を考慮すると、2025年までに2,500万kWの新規電源が必要になると指摘。CO2排出量抑制やエネルギー安全保障の観点から原子力発電は不可欠として、既存原子力発電所の大規模なリプレースを推進する姿勢を鮮明にした。

政府は、原子力へのリプレースによりCO2排出量が800万トン削減され、天然ガス消費量も13%減少する、と試算している。

ただし政府は、再生可能エネルギーには財政支援を継続する一方で、原子力発電には一切の補助金支出を否定。原子力発電は商業ベースで成立するべきとの考えから、建設に関するプロジェクトコストから運転管理・デコミ・放射性廃棄物処分のコストに至るまで、新規原子力発電所に関するすべてのコストは事業者の負担とした。

しかし原子力事業者が直面する多くの不確定要素を減じるために、@事業者が具体的な建設プロジェクトに着手する前段階で、標準化された原子炉の設計を認証するなど許認可手続きの合理化を進めるAこれまで決定を先送りしていた放射性廃棄物政策を明確にする――など事業者のプロジェクト・リスクを減らすための制度上の支援措置を確立するとしている。

@については、英保健安全執行部が来年初頭までに指針を策定。Aについては、英放射性廃棄物管理委員会が今月中に放射性廃棄物処分に関する最終報告書を発表することになっている。

また政府は今回新たに、原子力発電所の新規建設を促進するため「戦略的サイト評価」を実施することを提案した。

これは、具体的な建設計画が浮上するよりも前の段階で、国内各サイトの適性評価を実施しておくもので、評価にあたっては十分に地域住民の意見も聴取した上で検討する。ここで適性があると認められたサイトは、二度と適性に関する問題を蒸し返されることはない。これにより、国のレベルで承認されたサイトが後になって地方レベルで撤回されるような事態が回避され、原子力発電所の運開までのリードタイムがさらに短縮されると期待されている。

政府は来年初頭にも「戦略的サイト評価」を実施したい意向で、既存の原子力施設サイトだけでなく、解体される石炭火力発電所のサイトも対象とされる見込みだ。


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