[原子力産業新聞] 2006年7月27日 第2341号 <3面>

ハワード豪首相 原子力の積極討議を呼びかけ

原子力発電導入も視野に入れ、「原子力タスクフォース」を設けて検討を進めているオーストラリアのハワード首相は18日、長期エネルギー政策を検討するにあたって「原子力から顔を背けるべきではない」と、原子力発電導入に関する積極的な議論を呼びかけた。

首相は、「低コストで採掘可能なウランの4割はオーストラリアに埋蔵されており、オーストラリアは好悪に関わらず核燃料サイクルの一端を担っている」と現状を指摘。同国産ウランの輸入国である日本を例にあげ、「日本は55基の原子力発電所を持ち、それらによる温室効果ガス削減量はオーストラリア1国分の温室効果ガス総排出量に匹敵する」と、排出量削減に原子力が多大な貢献をする事実を強調した。

首相は、原子力を検討するタスクフォースの設置に対する各界からの反対意見についても言及。「自分たちはウランを利用しないが、海外には喜んで輸出するといった、非理性的で幼稚なもの」と一蹴し、グリーンピース創業者で、近年原子力支持者に変わったP.ムーア氏の発言を引用し、「原子力に関する議論の道を閉ざすことは、感情に流され科学を無視すること」と、原子力発電導入に関する理性的かつ積極的な議論への参加を呼びかけた。そして「世界的に原子力ルネサンスの機運が高まる中で、真剣に原子力に向き合わなければ、将来、手痛いしっぺ返しをくらう」と警鐘を鳴らした。

タスクフォースは報告書案を11月までに作成し、国民各層から意見を募集、年内に最終報告書を作成する予定だ。


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