[原子力産業新聞] 2006年7月27日 第2341号 <4面>

原子力機構 ITER用ジャイロトロン 実用レベルを達成

日本原子力研究開発機構はこのほど、国際熱核融合実験炉(ITER)のプラズマ加熱装置の心臓部である高周波発生装置(ジャイロトロン=写真)において、世界で初めて1,000秒の連続出力に成功した。ITER標準運転時間である400秒を大きく上回り、ITERの定常燃焼実験に向け大きな一歩となる。

ジャイロトロンは短波長・大電力の高周波を発振させる大型の電子管。ITER用は発振周波数170Gヘルツ、出力1MWで長さ3m、重量は700kgある。プラズマを1億度C以上に加熱するITERには、これを24本設置する。

原子力機構は以前からジャイロトロンの研究開発を進め、これまで高効率技術、1MW発振技術、人工ダイヤモンドによる出力窓技術などを開発。ITER用の開発担当に指名されているが、内部の不要高周波による発熱、内部の電子ビーム減少などにより、これまでの出力時間は100秒程度に制限されていた。

今回の成果は、@電子銃を改良、不要電子抑制による発信効率の向上A高周波放射部の内面形状最適化による不要高周波の5分の1への低減Bビーム電流の一定制御技術導入による発信の安定化―などにより達成した。発振効率は1MWで50%に達している。

ITERにはプラズマ加熱装置として、今回の高周波をはじめ中性粒子、イオンなどの打込み装置を使用。標準運転における全投入電力は50MWで、これにより500MWの核融合出力を得る。50MWのうち高周波は20MWを担うが、同加熱方式は金属ミラーにより自由に入射位置を変更可能、プラズマから離れた位置から小さい穴を通じて入射でき中性子遮蔽やメンテナンスが容易、などの特徴を持つ。

ITERのジャイロトロンは日本、ロシア、EUが各8本ずつ製作する計画で、激しい開発競争が繰り広げられているが、実用レベルの連続発振に成功したのは日本が初めて。ロシア、EUも納入までに開発の予定。


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