[原子力産業新聞] 2006年8月3日 第2342号 <7面> |
軽水炉技術の進歩つづる シス懇報告 EPR情報も掲載日本原子力産業協会の原子力システム研究懇話会(代表・近藤次郎東大名誉教授)は、毎年1テーマにしぼって報告書を取りまとめており、2006年はNo.14「軽水炉技術の改良と高度化」と題して取りまとめた。 原子力発電が登場して約半世紀が過ぎようとしており、世界の一次エネルギー供給の約7%(わが国では約16%)を占めるまでに発展、今後さらに増加することが期待されているが、その設備の大半は『軽水炉』によっている。 軽水炉が世界の原子力発電の主流になったのは、他の炉型に比べて優位性が認められたからで、世界の自由競争の中で今後さらに確固たる地位を確保するためには、他の炉型だけでなく他の発電方式とのコスト競争にも打ち勝つために、絶えざる進歩が求められている。 本書では、世界の軽水炉の「技術進化」に焦点を当て、専門的な視点から一般の人々までも視野に入れながら、ABWR(改良型沸騰水型軽水炉)、APWR(改良型加圧水型軽水炉)、EPR(欧州型加圧水型軽水炉)、さらに次世代軽水炉と言われ、米国での原子力発電所の建設発注が取りざたされているGE社製のESBWR(沸騰水型単純化軽水炉)、WH社製のAP1000(加圧水型単純化軽水炉)などまで取り上げ、開発の経緯、技術仕様などを紹介している。特にフィンランドで昨年8月に建設が始まっているEPRについては、かなりのスペースを割き、アレバ・ジャパンのスタッフが詳述しているのが特徴。 EPR設計に対する電力会社からの主な要求は、@発電コスト競争力が、最新の大規模改良型コンバインド・サイクル発電より優れた(〜20%)経済性A90%以上の稼働率Bプラント寿命は60年C50%以上のMOX装荷炉心を可能とすることD12〜24か月にわたるサイクル運転E事故時にプラントから800m以遠の住民は退去不要の設計とすること――などであり、特に安全対策として、炉心溶融時の溶融燃料の受け皿としてのコア・キャッチャーと、航空機墜落などの外部事象に対応するための二重格納容器を備えている。 本書の入手申し込みは同懇話会(電話03ー3506ー9071)まで。定価2,100円(税込み・送料別)。 |