[原子力産業新聞] 2006年8月10日 第2343号 <3面>

タイ・エネルギー大臣 「天然ガス資源が底をつく20年後は、
原子力導入も選択肢 国民の理解重要」 原子力委員 町 末男

バンコクで開かれた国際原子力機関(IAEA)のセミナーで講演を行った機会に、7月21日、タイのビセット・チューピハン・エネルギー大臣と会談した。

同大臣は同国での原子力発電の導入について、次のように語った。

@現在、発電の70〜75%を天然ガス火力でまかなっているが、年5%もの電力需要増に応対するために100万kW/年の早さで発電所を増設している。この状態が続けば天然ガスは15〜20年間で底をつく。現在既にミャンマーから一部を輸入している状態である。石炭火力、水力を増加させていく方針だが、原子力発電も重要な選択肢と考えられる。

A原子力発電導入についての経済・社会的視点からの可能性調査を2〜3年のうちに開始し、ポジティブな結果になれば2025年頃までには発電所を完成させたい。

B原子力発電導入の大前提となるのは、まず国民の理解を得ることである。

C導入の重要な要件は、行政官、技術者、運転員、研究者など必要な人材を育成・確保することである。

これに対して、筆者は「原子力発電の導入には長いリードタイムが必要なので、検討は早期に始めることが良い」と申し上げた。

一方、タイ電力公社(EGAT)のシティフォン総裁とも会談したが、同氏も原子力の導入についてエネルギー大臣とほぼ同様の見解を示し、「原子力発電は経済性にすぐれ、CO2発生量が少ない利点があることを認識している。しかし、その導入については国民の合意が前提であり、人材確保など必要なインフラの整備に時間を必要とする」と語った。


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