[原子力産業新聞] 2006年8月24日 第2344号 <1面>

FBR研究開発案を提示 作業部会検討 最終段階に

文部科学省の原子力分野の研究開発に関する委員会・原子力研究開発作業部会は17日、第15回会合を開催、同委員会報告書となる「高速増殖炉サイクルの研究開発方針について―高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズU最終報告書を受けて―(案)」を審議した。同委員会は10月中に最終報告書を取りまとめる予定。今回、事務局はこれまでの審議を踏まえ同報告書全体の素案を初めて提示、検討作業は最終段階に入った。

報告書案は、広く国民から理解を得ることを意識し、現状と今後の進め方を分かり易く説明した第1部・実用化に向けて、フェーズU最終報告書に対する技術的評価をまとめた第2部・技術的検討、2015年までの研究開発計画および留意点を示した第3部・今後の進め方により構成する。

第2部の技術的評価では、世界標準技術となる可能性、技術的成立性など多角的な視点から検討した結果、今後研究開発を特に進めるべき主概念はナトリウム冷却高速炉(MOX燃料)、先進湿式法再処理、簡素化ペレット法燃料製造が適切との判断を提示。補完概念は選択と集中の観点から、ナトリウム冷却高速炉(金属燃料)、金属電解法再処理、射出鋳造法燃料製造の1種類が適切との判断を示した。

その上で、主概念の炉システムは技術の質として高いレベルを目指し国際競争にも耐えうる概念と評価。一方で燃料サイクルシステムについては、高いポテンシャルを有するが、現時点では実験室レベルでの成果であり、今後、工学レベルでの研究開発の早急な実施、類似技術との比較検討などが必要と指摘している。

主概念は炉システムで13、燃料サイクルで12の革新的技術課題が示されており、こうした技術課題は今後5年間で実用への見通しを高い確度で得る必要があると提起している。

第3部では、これらの革新的技術課題を踏まえた15年までの研究開発計画などをまとめた。実用化を目指す技術開発を加速する方針で、10年頃から電気出力75万kWの実証炉の設計を開始、25年頃の運転開始を目指す。報告書は、こうした研究開発の進め方として安全確保、国際協力の推進、研究開発体制、評価体制、研究開発資源の確保、説明責任の充実などについてもその考え方を提示。研究開発費では10年以降、工学規模ホット試験や大型試験施設建設のために増大することが想定され、業務の選択と集中と国の適切な確保策が必要とした。


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