[原子力産業新聞] 2006年8月24日 第2344号 <4面>

原子力機構が成功 原子立体配列を精密決定 表面ナノ技術に貢献へ

日本原子力研究開発機構は7日、従来にも増して一桁以上高い輝度を持つ陽電子ビームの開発に成功し、これを用いて従来、輝度不足で困難だった表面ナノ物質(ナノは10億分の1m)の原子の立体的配列を精密に決定できるようになった、と発表した。今後、本技術の表面ナノテクノロジー開発への貢献が期待される。

物質表面に形成される表面ナノ物質は、半導体産業等で将来の先端材料として期待されており、表面ナノ物質の性質を理解するためには、まずその原子配列を知ることが必要不可欠であり、それを観測する顕微技術の開発が重要な要素となっている。

電子の反粒子である陽電子は、電子とは逆に物質から反発力を受ける性質があり、陽電子ビームは物質内部に進入せず、表面ですべて反射される特性を利用することで、表面の原子立体配列を精度良く決定できる。

原子力機構・先端基礎研究センターの研究グループでは今回、陽電子ビームの発生過程でビーム径をしぼる改善を行うとともに、電子顕微鏡と類似のビーム収束原理を用いることで、ビーム輝度を従来より一桁向上させることに成功した。

この陽電子ビームを原子配列の分かっていないシリコン上の銀の超薄幕(厚さ約0.2ナノm)に照射し、その全反射パターンを解析した結果、原理的に可能な1,000通り以上の組み合わせの中から、唯一の原子の立体的配列を決定することに成功したもの(=左図)。


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