「原子力情勢の今」を読む 原産協会理事に聞くA
電気事業連合会副会長 桝本 晃章氏 原子力に新しい夢・役割を
――トンネルを抜けたら一気に「原子力立国」の旗を掲げ、原子力が国家戦略的大事の位置づけとなったが、どう見るか。
桝本 国内にエネルギー資源のない日本は、50年前から原子力発電開発に懸命に取り組み、また、省エネ技術で世界の先頭を走ってきた。日本の技術でエネルギーを確保あるいは確保するのと同等の効果を得るという意味で正しかったし、それなりの地歩を確立している。またこの間、エネルギーの持つ「戦略物資としての」基本的性格は何も変わっていない。ここ数年で急浮上したような石油需給逼迫をはじめとする諸問題も、潜在していた問題が一気に顕在化したもので、その引き金は、旧ソ連の崩壊に始まり、中国経済のテイクオフやイランなどの核拡散の懸念などさまざまな歴史的、時代的背景が重なっている。
したがって、私は今を「エネルギー問題が本性を現した時代」と受け止めている。その中で、日本は依然として原子力と省エネに頼るよりないが、今や米、仏両国とも同じような認識に立ち始めており、その意味で、原子力のニーズがこれほど高まったことはかつてない。それだけに、「原子力立国計画」が新・国家エネルギー戦略として位置づけられたタイミングはよく、先見的政策だ。
ただ、日本には55基の原子炉があり、うち11基が30年以上操業している状況で、電力会社は、その安定・安全運転の足元固めをする喫緊の責務を負っている。これは結構大変な仕事で数年はかかる。ここで最大の懸念は、若い優秀な学生が原子力に魅力を感じてくれるかだ。
「立国計画」は政策なので、夢を書くわけにはいかない。それだけにこの際、「新しい原子力の役割」のような夢のあるビジョンが語られてほしい。例えば、原子力を推進することが地球上にある貴重な化石燃料・資源を節約し、次世代に残す役割があることをもっと強調するのも一案だと思う。
――電力業界は、原産協会にどういう役割を期待するのか。
桝本 原子力立国計画で具体的な取り組みと将来展望が示され、われわれが事業主体としてそれを推進していくが、その条件整備の最大かつ、今でも課題として残されているのが、社会とのかかわりだ。個別立地地域との関係は電力会社が責任を持つが、地域は単独で存在するわけでなく、県全体、日本全体の中にある。したがって、もっと日本の社会全体、特に有識者、政治家、各界・各地域のリーダー達に、原子力の特徴、持ち味、色合いなどをよく分かってもらう必要があり、それが、何か問題が起きた場合の冷静、的確な判断・対応にもつながる。
原産協会が手本とする米国NEIは、最も有効かつ回数多いロビー活動等を通じ原子力の理解促進、支持率向上の原動力となった。原産協会も原文振等と連携しながら、ぜひ日本国内の世論を深め、原子力に対する社会全体の理解、協力の水準を上げてもらいたい。
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[略歴]1962年、早稲田大学政治経済学部卒、東京電力入社、取締役広報部長、常務、副社長を経て、04年から電気事業連合会副会長。
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