[原子力産業新聞] 2006年8月31日 第2345号 <4面>

原子力機構 核融合制御を遠隔地から高度セキュリティー確立で可能に

日本原子力研究開発機構は、高度なセキュリティーを保ちつつ遠隔地から臨界プラズマ試験装置(JT−60)の実験を行うシステムを開発し、このほど京都大学から茨城県那珂町にあるJT−60の制御実験に成功した。

これは、遠隔地の研究者が大型の核融合実験装置を用いた実験を実験装置の制御室にいるオンサイト研究者とほぼ同等な環境で実施できることを、世界で初めて実証したものであり、国際熱核融合実験炉ITERの日本からの遠隔実験への参加実現に向けて、大きく前進する成果となった。

核融合研究では、実験装置の大型化・集約化に伴い、遠隔地の多数の研究者が世界的にも数少ない大型装置の実験に参加する研究協力の機会が増えてきている。

実験実施中は、実験条件の作成・変更、設備状況の確認なども迅速かつ頻繁に行い、リアルタイムで実験に反映させる必要があるが、いままでは、遠隔地から可能なのはテレビ会議を利用した議論への参加、計測器の操作、実験データの取得などに限られていたため、実験実施には装置のあるオンサイトへの研究者の移動が必要であり、その効率化が大きな課題となっていた。

遠隔地からの実験実施には、大型装置を保護し安全な運転を担保する制御システムへの不正侵入を防止するため、高度なセキュリティーの確保が必要。

その条件をクリアするため、原子力機構では国内の大型コンピュータを大容量ネットワークでつなぎ共有化する事業を通じてはぐくんできたセキュリティー技術を用い、同機構の核融合研究開発部門とシステム計算科学センターが共同で高度なセキュリティーの下で、遠隔地からでも実験を実施できるシステムを開発した。

同システムでは、遠隔地のパソコン等から遠隔実験用のサーバーへアクセスし、実験条件を作成する。その際、電子化された身分証明書を用いた個人認証や通信データの暗号化などにより、実験データの改ざんや制御システムへの不正侵入を防止する。


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