「原子力情勢の今」を読む 原産協会理事に聞くC 次世代軽水炉の開発に寄与 原子力発電技術機構 理事長 並木 徹氏
――一般にはなじみの薄い、原子力発電技術機構(NUPEC)について聞きたい。
並木 1973年の第1次石油危機以降、原子力発電の重要性が急速に高まり、電源三法交付金制度で立地促進の枠組みが固まる中、技術力を高めながら安全について国民の理解を深めるため、産官学の力を結集して「原子力工学試験センター」が76年に設立された。当初の原子力発電用機器等の安全性、信頼性試験に加え、安全解析、情報分析、防災対策、広報活動、国際協力へと幅広い事業拡大に伴い、92年に「原子力発電技術機構」に組織変更され、今日に至っている。
この間、軽水炉の改良標準化への取り組みが今日の主流であるA−PWR・BWR開発の根幹になったが、NUPECはその産官学ネットワークの中心的役割を果たした。ただ、03年の公益法人改革に関連して新設された「原子力安全基盤機構」に、NUPECは国からの受託業務の大半を移管。その後も、05年までに耐震性試験で世界的に知られた多度津工学試験所などの研究施設も廃止した。現在は、原子力耐震技術や廃止措置技術の継承、安全解析技術の高度化等の機能を残すのみである。
――NUPECの役割は終わったということか。原子力立国時代における新展望は。
並木 原子力二法人が統合され原子力研究開発機構が誕生、また、民間でも原産会議が原産協会と変わり、原技協会も活動を開始する中、NUPECについてもこれまで担ってきた役割の中で、新技術開発・実証試験等をどう活用していくかについて、関係機関の間で現在検討中である。
原子力立国計画ではさまざまな課題が山積しているが、NUPECが関与する方向性としては、30年頃からのリプレースの主軸となる次世代軽水炉の開発にあると認識している。世界中で原子力開発が急進展する中、その主力は軽水炉であり、次世代軽水炉を産官学一体となって開発することで合意したが、それをどこが、どういう形で担うかはこれからの課題だ。しかも、それにはまず、現有軽水炉の稼働率向上を実現する技術基盤を固め、世界のトップランナーとなる足元固めが肝心。
NUPECには耐震問題等の技術的蓄積が豊富な上、多度津工学試験所一括処分で得た資金的ゆとりもある。原子力立国の次のステップに発展していくために役立つはずで、次世代軽水炉の開発で寄与したい。まさに、メーカーも東芝がWH社を買収するなど、意欲的に世界市場に打って出ようとしているタイミングとも歩調を合わせ、産官学が一体となり、国際競争力のある原子力産業として世界に雄飛する足がかりとなりたい。
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[略歴]1967年、東京大学工学部電気工学科卒、通産省入省、資源エネルギー庁長官官房審議官、環境立地局長を経て退職後、安田火災海上保険顧問、電源開発常務、特任顧問を経て、05年から現職。
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