[原子力産業新聞] 2006年10月12日 第2351号 <2面>

「原子力情勢の今」を読む 原産協会理事に聞くG(最終回)
世界市場に乗り出し貢献を 日本原子力研究開発機構 副理事長 岡ア俊雄氏

――世界的な原子力ルネサンスの流れと原子力機構誕生のサイクルがぴったりのようですね。

岡ア 正にちょうど原子力機構設立1周年を迎えるが、同じ昨年10月に閣議決定された原子力政策大綱以降、ひとつは第3次科学技術基本計画でFBRサイクル開発が国家基幹技術に指定され、また、総合エネルギー戦略の議論で原子力の重要性を認識しながら、今回の「原子力立国計画」では、FBR 開発時期について、むしろ政策大綱を前倒しで取り組むべきだとする前向きの大きな変化があった。

さらに、たまたま原子力機構の事業重点4項目には、核燃料サイクル確立を目指したFBRの開発、高レベル放射性廃棄物の処分技術の開発、ITERを中心とする核融合技術の開発、それに高エネルギー加速器機構と共同で東海地区に建設中のJ‐PARCがあり、いよいよ平成19年度末に完成して最先端利用が始まる。全体を見渡し、素晴しい環境が生まれつつあり、われわれは今、そうした期待にしっかり応えるべき責任の重さを痛感している。

また、FBRシステム技術開発は、国家基幹技術に指定されただけでなく、国際的なFBR開発推進の流れの中で、わが国が自主性を発揮しながら国際貢献していく要である。それだけに、研究開発から実証システムに円滑に移行し、実用化へいかに早く到達するかが課題で、国、電力、メーカー等の参加を得て「五者協議会」が設立された意義は極めて大きい。

FBRシステムの研究開発は、研究機関だけでできるものでは決してない。システム全体を実用化に持っていくには電力やメーカーの皆さんと力を結集しなければならない。その意味で、原子力機構と産業界との連携が非常に大事な時期に入っており、原産協会には産官学連携の要の役割を果たしてもらいたい。

――国際貢献、国際展開についてはどうか。

岡ア 今年7月のG8サミットで、原子力の重要性と同時に平和利用に際し安全と核不拡散問題が今、世界が直面する共通課題だと首脳間で確認された。そうした世界の課題認識のもとに立ち、日本の国際貢献、戦略を考えていかねばならない。

原子力機構はその第一歩として、米国が今年になり打ち出した国際原子力エネルギーパートナーシップ(GNEP)にも積極的に参加、協力していく考えで、9月8日に日本のメーカー10社と連名で、関心表明(EOI)を行った。次のステップとして、燃料センターや先進燃焼炉建設の協議に移ると、日本の産業界が直接参加することにつながってくると思う。

このように、これからの原子力産業界は国内にとどまらず、世界に開かれた形で世界市場に乗り出し、世界の原子力利用に協力・貢献していく体制をぜひとってほしい。それが日本の原子力産業界がさらに活性化していく源泉になり、“国際標準”をとれる道でもある。

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[略歴]1966年、大阪大学工学部原子力工学科卒、科学技術庁入庁、原子力局長、科学技術事務次官歴任後退官、日本原子力研究所副理事長、同理事長を経て2005年から現職。


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