[原子力産業新聞] 2006年10月26日 第2353号 <3面>

座談 核不拡散の潮流に日本はどう応えるか
 「核燃料供給保証」の本質・課題を探る (続き)

国際社会の規範追求に知恵を

司会 では近藤先生、最後に全体を通じて、まとめをお願いします。

近藤 国際核不拡散体制の構築を規制を通じてやるのか、誘導を通じてやるのか、あるいは、それらの適切な混合でやるべきかと考えている。IAEAは核不拡散条約(NPT)以後は、誘導策に傾いているように見えるが、その理由は、ユニバーサルな規制規則が成立しないからだろう。 国際公益を追求する国際条約ですら、“仲良しクラブ”の面があり、批准しない国が存在する。核不拡散分野の最近のIAEAの成果である追加議定書にしても、日本はさっさと批准したが、まだこれを受け入れていない国が少なからずある。そうなると、その上に何か規制規範を定めようとしても成立が難しい。これはグループ77が核保有国に不信を抱いているからだ。しかし、だからといって、誘導策を追求しても、そこに不信がある限り効果的にならない。取りこぼしが残るからだ。

おまけに、そこには誘導策に名を借りて、実利を追求するプレーヤーが出てくる。ロシアのTENEXの振る舞いはその好例。

この状況を見て考えるに、核不拡散は、原子力の平和利用の前提条件、つまり市場規範だから、市場メカニズムに調整を委ねるべきものではなく、やはり不信の構造を克服して国際社会の規範を追求するという基本動作を忘れてはいけないと思う。そのためには、核保有国とグループ77との間で交渉が必要で、それを成功させる知恵を出す必要がある。

これを含めて、グローバルな核不拡散政策のルール・メーキングに参加するためには、周到な準備で説得力ある提案をまとめ、説明していくことが必要であり、まずはそのような提案をまとめる「知恵出しのグループ」を、政府や学界に形成していくべきと考えている。

司会 本日は、たいへんタイムリーかつ内容の濃い座談となり、ありがとうございました。


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