[原子力産業新聞] 2006年11月2日 第2354号 <1面>

中部電・北陸電が保安院に報告提出 原因は高サイクル疲労 タービン損傷の原因と対策
20%負荷遮断試験時に乱流 「当時の知見で想定できず」

中部電力と北陸電力は10月27日、蒸気タービン羽根損傷の原因と対策に係わる報告書を原子力安全・保安院に提出した。それぞれ浜岡5号機、志賀2号機で、低圧タービン第12段の羽根にひび、折損が生じたことについて、いずれも試運転中の20%負荷遮断試験時の蒸気流振動により初期ひび割れが発生し、その後の運転での繰り返し応力により割れが進展したものと判断。両社のタービンを受注した日立製作所では、今回の調査内容を考慮し、新しい羽根を製作することとしている。

浜岡5号機で6月、低圧タービン第12段の羽根1本の脱落が確認されたのを受け、保安院は同型式の志賀2号機のタービンについても羽根の点検を行うよう指示したところ、第12段の羽根のみに、全840本中、浜岡5で663本、志賀2で258本のひび等が見つかった。

現地観察により、両発電所タービンとも羽根の根元取り付け部の破面に高サイクル疲労が認められ、調査を進めたところ、試運転中の20%負荷遮断試験時に、「蒸気流の乱れによる不規則な振動」(ランダム振動)と「一時的な蒸気の逆流による羽根の振動による応力」(フラッシュバック振動)が重なり合ったことで、初期のひび割れが発生し、その後の低負荷運転、営業運転で繰り返し加わった応力により割れが進展したとの結論に至った。浜岡5の羽根1本の脱落は回転に伴う遠心力に負けて起きた。いずれのタービンも、日立が135万kW級、毎分1,800回転機として、世界で初めて設計を手掛けた最新鋭だが、今回事象の一原因のランダム振動が低負荷時に第12段動翼まで及ぶことについては、「当時の工学的知見で想定できなかった」としている。

日立では今後、ランダム振動、フラッシュバック振動を考慮したタービンの設計を検討する。設計段階では、新たな試験装置を導入し、実機運転状況を模擬した縮小モデルによる試験や解析による検証精度の向上を図るとしており、同社原子力事業部では、「一刻も早く新しい羽根の製作にかかり発電所を復旧させたい」と述べている。

新しい羽根の完成までの応急対策として、タービンの第12段の動翼と静翼を外し、静翼の代わりに圧力プレート(整流板)を設置して、原子力発電所の運転再開を検討している。


Copyright (C) 2006 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.