[原子力産業新聞] 2006年11月9日 第2355号 <1面>

IEAが初の推進姿勢 原子力建設 各国に要請 環境とエネルギー不足全面に

OECDの国際エネルギー機関(IEA)は7日、『2006年版世界エネルギー見通し』を発表した。各国政府に対し、新規原子力発電所の建設を加速するよう要請した。同報告書は毎年発表されているが、IEAが具体的に原子力発電所の建設を呼びかけたのは今回が初めて。

IEAは、各国の政策が変わらない限り、世界の1次エネルギー需要は「30年までに53%の増加を示す」と予測。増加分のうち7割は、中国・インドを中心とする発展途上国が占めるとした。また世界の石油需要は05年の日量8,400万バレルから30年には日量1億1,600万バレルに増加。世界のCO2排出量は30年までに55%増加し、年間400億トンに達し、10年までには、米国に替わり中国が世界最大のCO2排出国となる、と予測。供給不安や燃料価格の高騰などにより、各国のエネルギー安全保障は脆弱性を露呈するとの見解を示した。

またIEAは、「供給を確保するためには30年までに世界全体で20兆ドルものエネルギー関連投資が必要」と試算。うち6割は電力部門に投資する必要があるとの考えを示した。一方で、過去5年間のエネルギー関連投資の傾向が、石油や天然ガスなど資源開発への投資ではなく、近年の燃料費高騰に伴う損失コストの補填に向かっていると分析。「このままではエネルギー事情が悪化し、環境にも多大な悪影響を与える」と警鐘を鳴らしている。

そのためIEAは、費用対効果の高い手段として原子力に注目。@原子力は石炭や天然ガスに比べコスト面でも十分な競争力を持つAウラン需給も十分な余裕がある――などとし、「原子力は地球温暖化防止やエネルギー安全保障の強化に役立つ」と結論。今年7月に採択されたG8サンクトペテルブルク・サミットの見解を裏付けた。

そして現状のままでは、世界の原子力発電容量は05年の3億6,800万kWから30年には4億1,600万kW(14%増)までしか増加しないが、積極的な原子力発電開発により5億1,900万kW(41%増)まで拡大する、と予測した。

ただIEAは、「市場自由化の中で民間企業の原子力発電への投資を促進するよう、政府が強い役割を果たす必要がある」と補足。原子力発電を受け容れている各国(オーストリアのように原子力発電を違法としている国々は除く)に、原子力発電の拡大に向け、政府が強いリーダーシップを発揮するよう要請した。


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