[原子力産業新聞] 2006年11月9日 第2355号 <2面>

原環センターが創立30周年 記念講演会開く 3月末積立金1兆384億円

原子力環境整備促進・資金管理センターは10月31日、東京・虎ノ門パストラルで創立30周年記念講演会を開いた。約200人が参加、米原高史・同センター常務理事が「原環センターの30年と展望」について講演、記念特別講演では、「技術と社会の関係再構築へ向けて――放射性廃棄物処分の今後」と題して北村正晴・東北大学未来科学技術共同研究センター客員教授が、「韓国の低中レベル放射性廃棄物処分へのアプローチ」と題して宗明宰(ソン・ミョン・ジン)韓国水力原子力会社上席副社長が講演した。

米原常務は、低レベル放射性廃棄物の海洋投棄が国際的に難しくなり、結局、93年のロンドン条約締約国会議で、放射性廃棄物の海洋投棄が、20年後の再検討条項が盛り込まれたものの、全面禁止となった経緯を説明した。

これにより、同センターが海洋処分の調査研究から、陸地処分研究や高レベル放射性廃棄物の研究に重点を移してきた内容を述べた。また資金管理業務について、高レベル放射性廃棄物の最終処分および再処理の積立金は、3月末時点でそれぞれ、4,241億円、1兆384億円に達していることを明らかにした。

北村教授はJCO事故後、原子力技術と社会とのギャップに危機感を感じ、「専門家の沈黙は無責任」と痛感したことから、自ら市民との対話活動を開始。対話の実践では@国民の判断能力・健全さを信頼した行動A反復型・継続対話フォーラムの場B参加者は当初、積極的な活動家は排除したが、その後撤廃――などを方針にして行っていると紹介した。

社会とのコミュニケーションでは、「拙速な理解はないし、問題解決もない」「自分を認識し、相手を認識し、世界を認識するには時間がかかる」と強調した。対話の主催者は誰がいいかとの会場からの質問に対し、北村教授は「中立機関が良いが、原子力推進機関でも運営のやり方の中で、中立性を模索し参加者の信頼を得ることが重要だ」と述べた。

低中レベル放射性廃棄物の処分地選定に成功した韓国の宗・韓国水力原子力会社上席副社長はまず、1986年以降、9度にわたって@処分主体を原子力研究所から産業資源省に変更A民主化に伴った地方自治体首長の権限強化B選定の透明性の確保C首長の決断のみでの誘致決定制度D大規模な地域振興策――などの新提案をそのつど行ってきたものの、結果は失敗の連続だった、と振り返った。

それが05年11月の地方自治体4か所の立地候補地点で行った住民投票で、89.5%と最も賛成率が高かった慶州市に決まった理由を振り返り、同氏は、@過去の失敗の経験の中でも、しだいに国民理解が進んだA反対派・環境団体の中にも組織が大きくなって不祥事も明らかになるなど、国民も反対運動の実態を感じるようになったB魅力的な地域振興策を提案できたC過去の反対運動で、特に扶安(プアン)郡での過激な反対運動(推進派の郡長が住民から集団暴行を受けて重傷を負ったことなど)を反省する機運がでてきた――点などを挙げた。また、韓国の低中レベル廃棄物処分場は、地域振興費を含めると世界一高い処分場となるものと考えているが、減容化技術などを採用することで将来最も安い処分場を目指している、と語った。


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