[原子力産業新聞] 2006年11月9日 第2355号 <3面> |
欧州 仏コンサル会社が指摘 電力供給不足に警鐘フランスの大手コンサルタント会社であるキャップジェミニ社はこのほど、『欧州エネルギー市場の展望』と題する調査レポートを発表。欧州の電力需要は、新規発電設備への投資を大きく上回るペースで増大しているとし、供給電圧の低下や停電など電力不足の危険性が高まっていると警鐘を鳴らした。 レポートは電力の供給余力に着目。発電設備容量に占める供給余力の割合が、2004年の5.8%から、2005〜2006年の4.8%に低下しているとした上で、欧州連合加盟国のほとんどが、需要増に見合う設備容量への投資を怠っていると指摘した。 欧州の電力会社はこれまで、長期的な需給予測に基づいて設備投資を行ってきたため、供給余力は十分に確保されてきた。しかし電力市場自由化や経済性至上主義の拡大にともない、電力会社は短期的な費用対効果を求められるようになり、設備投資が停滞傾向にあるという。欧州の電力会社の総売上高に占める設備投資の割合は、2000年は18%だったが、2004年にはわずか10%に減少している。 また通年の需要パターンの変化が、供給力の不足を拡大しているとも指摘されている。 これまで欧州の需要パターンは冬季にピークに達しており、電力会社は夏季に発電プラントを休止させていた。しかし近年は、猛暑により電力需要が増大し、欧州での停電の多くは夏季に発生するようになった。 現実に、スペインでは需要のピークが今や完全に夏季にシフトしている。フランスでも仏電力公社(EDF)は、これまで夏季に集中させていた原子力発電所の休止スケジュールを再検討している。 そのほかにもレポートは、立地計画立案手続きの煩雑さや、政府による規制体系の頻繁な変更などが、電力会社の新規建設を慎重にさせている、と指摘。各国政府ならびに欧州委員会に対し、設備投資をより一層促進するよう配慮した施策を講じるよう求めている。 |