[原子力産業新聞] 2006年11月16日 第2356号 <4面>

放医研等 X線で初期がん診断も 精緻3次元画像可能に

(独)放射線医学総合研究所は、(株)リガク、松本歯科大学の新井嘉則教授との共同研究により、小動物のがんなど柔らかい生体組織の病態の進行状況を、精緻な分解能でほぼリアルタイムで映し出すことのできる3次元高精細造影CT手法を確立した。

今回、リガク製の実験動物用のCTを用いて、肝臓や腸管など柔らかい組織についてもコントラストの良い画像を得るため、X線エネルギーを最適化し、新たに画像処理フィルターを開発することによって、画像解析の信頼性、特に軟部組織の診断精度が飛躍的に向上した。

また、いままでは小動物用のCTでは用いられることのなかった人体用の一般的なヨウ素系水溶性造影剤を小動物に自動注射器で注入し、がん患部を取り巻く0.2mmの血管や初期がんの発生状況といったものまで観察できるようになった。

これにより、いままでは脂溶性造影剤投与から撮影まで数時間かかったものが投与1、2分後から可能で、しかも1ml当たり100円と、従来の造影剤が同3万円程度だったのに比べると格段に安価だ。

新手法の確立により、一般的に実験動物の病理解剖によって行われてきた薬剤の効果の確認や、放射線治療の効果の確認といった研究手法が一気に精緻化されることが期待される。特に生体上でのがんの進行などを解剖によって停止することなく連続して観察できることから、創薬や治療法の開発など幅広い応用が見込まれる。


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