[原子力産業新聞] 2006年11月23日 第2357号 <4面> |
医療被曝シンポ 人材問題にも言及 「必要性とリスクのバランスを」医療被曝について考えるシンポジウムが17日、放射線医学総合研究所ほか有志による研究会の主催で、中央大学駿河台記念館(東京・千代田区)で開催され、医療関係者、行政官らを交えて意見交換を行った(=写真)。医療被曝には特に制限が設けられていないが、技術面、診断頻度等の最適化により、被曝線量を低減していく必要も叫ばれており、放射線診断・治療に伴う被曝の現状を把握するとともに、患者への説明の在り方などについて考察するのが本シンポのねらい。 医療被曝について、放医研の西澤かなえ氏は、単純X線撮影と比較しCT検査では被曝線量が数桁上がることを示し、既に日本国内1万台を超したCT装置による検査が先進国中で群を抜く件数に達しているほか、1人当たりの線量も極めて多くなっている現状を述べた。その上で、放射線医療行為の「正当化」判断として、@X線診断の必要性A検査により得られる情報B治療・予後に及ぼす影響C代替検査の有無――を掲げ、必要性とリスクのバランスからみて、「正味の便益が最適化するようにする」ことを指摘。これに対して、奥村二郎・国立成育医療センター運営部長は、患者に説明するためのデータがまだ不十分、消費生活アドバイザーの碧海酉癸氏は、広報パンフレットによく使われる「シーベルト」と、照射の際に技師から聞く「グレイ」との相違が分かりづらいなど、一般人の理解を得る難しさをそれぞれ述べた。 また、最近の放射線がん治療について、唐澤久美子・順天堂大学医学部助教授は、技術の進歩により線量集中性が改善し、治療効果が上がってきたとする一方、装置の偏在、技術者不足などが医療サービスに影響を及ぼしていることを懸念した。行政の立場から、戸谷一夫・文部科学省会計課長は、今夏のがん対策基本法成立を受け、人材育成強化をねらう「がんプロフェッショナル育成プラン」に向けた来年度新規予算獲得に努めていることを述べた。 |