[原子力産業新聞] 2006年11月30日 第2358号 <3面>

文科省が原子力委に ITER計画の状況を報告 オーストラリアも関心強める

文部科学省は28日の原子力委員会定例会議で、ITER計画および幅広いアプローチの最新状況を報告した。ITERの建設・運転期における各極分担や機構の詳細、同アプローチの施設別費用などを説明。またオーストラリアがITER計画に関心を示していることも明らかにした。

今月21日、7極はITER協定に署名したが、併せて第1回暫定理事会も開催され、ITER機構の人事規則、資源管理規則などを承認した。今後理事会は日本での開催も含め年2回開かれ、事業計画の承認、機構幹部職員の任命などの重要事項を決定する。

建設期の調達分担は欧州4、日本2、その他1の割合。職員枠はこの割合に準じ、日本は全体で200名の内の約40名となる。実験計画決定などのための投票加重率は欧州30、日本15、米国15、その他10となった。

ITER機構は、池田要・機構長の下に建設を担当する首席副機構長としてノルベルト・ホルトカンプ氏(欧州)、この下にトカマク、エンジニアリング、制御・計測の各担当の副機構長を米国、韓国、インドから任命。機構長直属として官房、安全、核融合科学技術の各担当の副機構長を中国、欧州、ロシアから任命した。

日本が分担する装置・機器は、@プラズマの立上げ・燃焼・立下げを制御する超伝導中心ソレノイドコイルAプラズマを閉じ込める超伝導コイルB核融合で発生する中性子を遮蔽し熱を取出すブランケットCブランケットの保守・交換作業を行う遠隔操作機器Dヘリウムや不純物を排出するダイバータE燃料のトリチウムの分離回収・精製・処理およびプラズマへの再注入を行うプラント設備F電磁波でプラズマを加熱する高周波加熱装置G高エネルギー中性粒子を入射するプラズマ加熱装置の一部Hプラズマ中のイオンと電子の密度や温度、不純物、中性子等の分布を測定する計測装置――など。

オーストラリアは今年10月、学会レベルでITERに関するシンポジウムを開催するなど、関心を高めている。完成した後で参加することも考えられるが、プロジェクトに新規に参加する場合、理事会の全会一致が必要になる。

一方、幅広いアプローチの運営組織は運営委員会の下に、国際核融合エネルギー研究センター、国際核融合材料照射施設、サテライトトカマク(JT─60)の3つのプロジェクト委員会を設置する。各プロジェクトの費用は、順に約280億円、約200億円、約440億円。センターと照射施設は日本原燃・再処理工場に隣接する旧ITERサイト候補地に建設することを今月11日に決定。研究活動には日欧以外のITER参加極からも参加を求める。


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