[原子力産業新聞] 2006年12月7日 第2359号 <1面>

エルバラダイ事務局長が来日 「米印原子力平和協力を支持」 混迷する国際状況には苦慮

外務省の招聘で来日中のエルバラダイ国際原子力機関(IAEA)事務局長は1日、東京・プレスセンタービルの日本記者クラブで会見した(=写真)。

同事務局長は、現在IAEAが抱えている最大の問題は、イランの核開発疑惑についてであり、イランはウラン濃縮について平和利用のためだと主張しているが、「いまだに信頼できる段階にはない」と述べた。

IAEAが提案している核燃料多国間管理については、「多少誤解がある」とした上で、まず第一には核燃料の供給保証が重要だと言っており、「燃料銀行のようなもので、バーチャルなものでもよく、それをIAEAが管理し、いざと言うときに供給するということだ」とした。

その次の段階で多国間で施設を建設・管理するという構想だ、と説明した。最終的には多国間管理にすべきだと考えているものの、同様の構想は数十年前からあるもので、いまだに実現されていない構想だが、原子力発電に対する世界的な関心が高まりつつある中で、その必要性は再び高まっている、と述べた。

核不拡散条約(NPT)に加盟し、その後脱退して核実験を行った唯一の北朝鮮の核実験については、「核不拡散体制が後退したのは事実」としたあと、「まず次の核実験を阻止しなければならない。北朝鮮はすべての核兵器を放棄して、NPT体制に復帰してほしい」と述べ、そのためには、IAEAの査察官が常駐していた2002年以前の状態に戻し、IAEAの検証を行うことも極めて重要だ、と語った。

インドと米国の平和利用協力について、「核実験をしても、いつの日か認められるとの誤ったメッセージを、北朝鮮に与えるのではないか」との質問に対して事務局長は、「私は最近の米印原子力協力の話がでる以前から、支持を表明している」としたうえで、世界最大の民主国家に対し、近代技術を提供し、人口の半分に当たる5億人を貧困から救い、希望を与え人間として生きる権利を与えるものだ、と説明した。この協力の実現によって、NPTから脱退するような国は出てこないだろう、とも語った。

いずれにしても、「対話が重要であり、標準型の解決策などはない」と強調した。


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