[原子力産業新聞] 2006年12月14日 第2360号 <2面> |
原子力 地方からのレポート(2) 北陸原子力懇談会会長 松村文夫氏 地道な“草の根活動”を継続――北陸原子力懇談会(北原懇)は、北陸電力の能登原子力発電所(現志賀原発)建設計画に合わせ、旧原産会議の全国5番目の地方組織として設立されたが、特性は。 松村 北陸電力初の能登原子力発電所建設構想をスムーズに進めるにあたり、地元石川県を中心に、富山県や当時すでに全国有数の原子力立県になっていた福井県の北陸地域の理解活動を推進するとともに、ラジオアイソトープの理解促進と合わせ、原子力の平和利用に資するため1977年に設立された。北原懇の初代会長は宮太郎金沢商工会議所会頭で、北陸各地の商工会議所、経済同友会など経済・産業界を中心に県や市町村を含め千を超す企業・団体の協力を得てスタート、これが今日でも北原懇の強みとなっている。 ただ、北陸電力の電力供給エリアは石川、富山、福井(敦賀市以北)の3県で、他地域から見ると「北陸」と1つに見えるかもしれないが、複雑な地域的特性がある。福井県は東西に細長く、「政治は福井(嶺北)、原子力は敦賀以南(嶺南)」というお互いの自負と意識の違いがあった。同じように、能登と加賀、呉東と呉西でも歴史、文化、住民気質の違いが歴然としており、別の国≠ニいっても過言ではなく、それだけ対応にきめ細かさを必要とする地域である。 また、敦賀以南の原子力発電は関西圏の電力の約半分を供給しているだけに、関原懇の主要活動エリアでもある。さらに、原子力理解促進組織には原懇のほか、志賀原子力発電所環境安全対策協議会や福井県エネルギー懇話会、福井県原子力平和利用協議会等があるといった図式になっている。片や、大プロジェクトとしては、「もんじゅ」を中核とする福井県のエネルギー研究開発拠点化構想とか原電敦賀3、4号機の増設等がある。しかし、そこに北陸原懇が直接絡んでいく考えはなく、あくまで関係機関との協調の範囲内で全体協力していくスタンスだ。 ――では、北原懇の活動主体、方針は何か。 松村 北陸電力の原子力発電所新設は志賀2号の完成で当面終わり、運転と保守の時代を迎えた。また、金沢大学などがイニシアチブをとって新たに原子力を中核とする新構想のようなものも聞いていない。当面は、20年以上の歴史がある女性を巻き込んだ理解促進活動と子供たちを対象とした次世代のエネルギー教育活動に一段と力を入れる。当面する大きな問題は電力会社に任せ、われわれはもっと息の長い観点から、特に子供の基礎的教育に資するのが一番の責務だと考える。目新しくはないが、地道、伝統的な取り組みを継続しながら、草の根の理解促進活動を進めていきたい。 また、大学教授、高等専門学校長として長く在籍した経験から見ると、今後の技術者、専門家の不足が非常に懸念される。大学が独立法人となり、長期的基礎研究が手薄となる中、何か新しい研究への魅力をつくることが肝心。原子力でいえば、FBRサイクル実現に加え、画期的な放射性廃棄物処理技術とか原子力による水素生産などの基礎研究に力を入れ、一般の目にも原子力の利点をより明らかにし、世界をリードしてほしい。 ――原産協会への期待、要望はどうか。 松村 地方原懇は、旧原産時代には横の連携が薄かったように思う。原産協会には、各原懇全体を束ねて意見を集約し、国、電力、メーカーに働きかけてほしい。また、原子力政策大綱、「原子力立国計画」ができて終わりではなく、これからが出発点。原産協会は、そのための力、目付け役のような役割を果たすよう期待したい。 【略歴】 58年金沢大学工学部電気工学科卒、同大教授、同大工学部電気・情報工学科長。石川工業高等専門学校長、北陸原子力懇談会副会長を経て、05年から現職。 |