[原子力産業新聞] 2006年12月14日 第2360号 <3面> |
米国 DOE/EIA 2007年版長期見通しを発表 原子力を上方修正米エネルギー省・エネルギー情報局(DOE/EIA)は5日、2030年に至る米国の1次エネルギー需給を予測した「2007年版長期エネルギー見通し」(AEO2007)を発表した。AEO2007では、2030年の原子力発電設備容量を、前回の2006年版見通し(AEO2006)から上方修正されている。 AEO2007(標準ケース、以下同)は、米国の1次エネルギー消費量は2005年の100兆1,900億BTU(英国熱量単位)から年率1.1%で増加し、2030年には131兆1,600億BTUに達すると予測。AEO2006から3兆4,400億BTU分、下方修正された。 これは、@エネルギー価格の高騰A経済成長を若干低く見積もったことB省エネ機器の浸透による家庭・商業部門のエネルギー消費量の低下C電力需要を低く見積もったこと――などが原因だという。 AEO2007は原子力発電について、既存炉では300万kW分の出力が増強され(既存炉の閉鎖による減少分も含む)、2005年エネルギー政策法による税控除や石油価格の高騰により1,250万kW分が新たに建設されると予測。2030年の米国の原子力発電設備容量は1億1,260万kW(2005年実績は1億kW)に達するとし、AEO2006の予測(1億900万kW)から上方修正した。 もちろん現時点で判明している各電力会社の新規建設プロジェクトでは、それ以上の原子力発電設備容量の建設が計画されており、AEOは控え目に過ぎるとの見方もある。しかし2005年版以前のAEOでは、原子力発電所の新規着工件数はゼロと予測されていたことから比べると、米国の原子力ルネサンスの流れを多少は反映していると言えるだろう。 またAEO2007は、原子力発電設備容量の増大に伴い、原子力発電電力量は、2005年実績の7,800億kWhから2030年には8,960億kWhに拡大するとしたが、総発電電力量に占める原子力シェアは、2005年実績の19%から2030年には15%に低下すると予測している。これはAEO2007が依然として、石炭火力発電の大幅な拡大(=図参照)を盛り込んだ内容になっているため。 AEOは、作成時点でのエネルギー・環境政策をベースにとりまとめているため、AEO2007でも、今後米国で導入が予想される気候変動防止のためのCO2排出対策等は一切考慮していない。そのため、米国における石炭の役割はますます大きくなると仮定されており、2005年は22兆8,700億BTUだった石炭消費量(原子力は8兆1,300億BTU)は、新規に1億5,600万kW分の石炭火力発電所が建設される影響で、2030年には34兆1,400億BTU(原子力は9兆3,300億BTU)に達すると予測されている。 このほかエネルギー消費に伴う米国のCO2排出量は、2005年実績の59億4,500万トンから年率1.2%で増加して、2030年には79億5,000万トンに達すると予測されている。一方、CO2排出集約度(GDP単位あたりのCO2排出量)は、2005年のGDP100万ドル当たり538トンから年率1.7%で低下して、2030年には353トンになるとみられている。 |