[原子力産業新聞] 2007年1月5日 第2361号 <11面> |
書評 「北朝鮮核実験」に続くもの──核拡散は止まらない 吉田康彦著(元IAEA広報部長)10月9日の北朝鮮の核実験後、タイムリーに刊行された。6か国協議で「北」がなぜ米国のみとの交渉を望むのかの背景がよくわかる。 「全世界の人口比60%超の国々が核を保有し、日本など非保有国は少数派に転落した」現実の中で、「北朝鮮と中国の脅威に対抗するために核武装を唱えるのは、感情論として理解できなくはないが、日本としてはあくまで『非核』を貫いて、平和的手段による危機克服に努力すべき」と説く。 自ら「北」の擁護派ではなく現実主義者と語る著者の、「世界では日本以外は核と原子力は同じコインの両サイドと見ている」、「核抑止力に頼りながら核廃絶を唱えるのは矛盾」、「核技術と核物質は拡散する」などの指摘は考えさせる。中長期的には「核兵器使用禁止条約」が必要とも指摘する。 NPTあるいは米国の核不拡散政策の問題、5大国、またインド・パキスタン・イスラエル、南アやイランなどの核開発の経緯、GNEP、多国間核燃料保証構想など最新動向の解説書にもなる。第三書館の発行で定価1,200円+税。 |