[原子力産業新聞] 2007年2月1日 第2365号 <3面> |
カナダ 連邦政府が後押し 原子力によるオイルサンド回収が話題石油価格の高騰にともない、活況を呈するカナダのオイルサンド業界。オイルサンドの回収法としては、高圧の水蒸気を油層に送り込む方法が一般的だが、その際に利用される天然ガスをめぐり、温室効果ガス排出量削減の観点から、原子力を利用したオイルサンド回収プロジェクトが話題になっている。 これは民間企業のエナジー・アルバータ社(EAC)が提唱したプロジェクトで、温室効果ガス排出量の増大に悩まされている連邦政府が、同プロジェクトを熱心に後押ししている。G.ルン連邦天然資源相は、昨年から再三にわたってオイルサンド回収に果たす原子力の役割を強調。積極的にオイルサンド業界と意見交換を重ねており、当初は懐疑的だった業界側も、徐々に協力的な姿勢を示し始めた。 今年に入り、ルン大臣の熱意に押されるような形で、オイルサンド生産者であるハスキー・エナジー社とトータル社が、プロジェクトへの参加を検討していることを正式に表明した。1月24日にはシェル・カナダ社も「長期的には経済性が見込める可能性もあり、原子力オプションも検討課題の1つ」とコメントしている。地元のアルバータ州政府はプロジェクトへの協力に否定的だが、ルン大臣はアルバータ州政府に対する説得を続ける意欲を示している。 EACは昨年8月、カナダ原子力公社(AECL)と協力関係を構築。出力70万kW級のCANDU6を2基、オイルサンド生産の中心地であるアルバータ州フォート・マクマレーへ建設するプロジェクトを掲げた。 原子力発電所の建設と運転はAECLが担当し、EACを中心とする共同出資者が発電所の所有者となる。ただし一般の送電網には接続せず、特定の消費者(主に出資者)の需要に応じて、蒸気、電気等を独自に供給する。EACは来年3月にも認可を申請し、2011年3月に着工、2016年12月に運開することを目指している。 EACは、1基のCANDU6によって回収可能なオイルサンドは日量10〜15万バレルで、1日あたり1億7,000万〜2億6,000万立方フィートもの天然ガスを代替することになると試算している。燃料コストを比較すると、15万バレル/日のオイルサンド回収に必要な天然ガスの燃料コストが年間5億5,000万加ドル。これに対しCANDU6では年間わずか1,800万加ドルと見積もられている。 |