[原子力産業新聞] 2007年2月8日 第2366号 <1面>

NUMOは国へ申請方針 東洋町の文献調査 2知事が反対 焦点は国の判断に移行

高知県東洋町(田嶋裕起町長)からの「高レベル放射性廃棄物の最終処分場の設置可能性を調査する区域」への応募を受け、橋本大二郎・高知県知事と飯泉嘉門・徳島県知事は6日、実施主体の山路亨・原子力発電環境整備機構(NUMO)理事長、望月晴文・資源エネルギー庁長官を相次いで訪ね、「地域の理解が得られるまで文献調査を行わない」よう申し入れた。会談後、山路理事長は記者団の質問に答え、経済産業省に対して年度内にも文献調査を盛り込んだ事業計画変更書を提出する意向を示した。

橋本知事は山路理事長に対し、東洋町民の6割を超す反対請願、隣接する室戸市、北川村の議会による処分場誘致反対決議に加え、地元産業への風評被害を懸念し、民主主義のルールから、今回の応募は受け付けられるべきではないと主張した。

山路理事長は会談後、記者団の質問に答え、NUMO理事会等の手続きを経て、国への認可申請を行う考えを示したほか、今回の両県知事の申し入れを受け、地域の理解・協力を得られるよう一層努力していく、とした。

同機構への申し入れに次いで同日、両知事は経済産業省に望月長官を訪ね、同様の調査反対の申し入れを行った。

橋本知事は「議会も住民理解も進んでいない中で、町長だけで手を挙げてよいのか。多額の交付金が出るからかも知れないが、本当の理解を得てから進めてほしい」と要望し、「このままでは地元のためにも良くない。このようなやり方は変える良い機会だ」と述べた。

飯泉知事は「隣接する徳島県の町は、(東洋町との)生活圏の一部となっている。隣接他県の意見は聞かなくてもよいことになっているが、仕組みを変えるべきだ」と述べた。

望月長官は、「2人の知事が申し入れをしたことは重く受け止めている」と発言した。

記者の質問に答えて橋本知事は、東洋町への対応について「県としてこの施設について反対しているわけではなく、地方自治の手続きのプロセスがおかしいと言っているだけだ」と語った。

飯泉知事は「決断が遅れると反対運動が広がっていくのではないか。NUMOは早く決断してほしい」と述べた。

会談内容について説明した同省の吉野恭司・放射性廃棄物等対策室長は、「今回の文献調査は予備的調査と位置付けているもの。一方的にNUMOが調査先を決めるわけにはいかず、公募方式を取っている。東洋町長も重い決断をしたものと受け止めている」と述べたほか、地域振興の交付金については住民に役立つ制度であり、真剣に検討を行ってもらうための制度だ、と説明した。文献調査(概ね2年間)での年間交付金額は県や隣接自治体を含め計2.1億円から、来年度からは10億円に増額される。

同室長は今後、NUMOとしては「住民理解とは議会なのか、住民投票なのかなどについては踏み込まず、町長名で出されたものを審査することになる」とする一方で、NUMOの予算・事業計画(変更も)については国の認可が必要で、国としてはNUMOから事業変更申請が出されれば、審査基準の『業務の適切かつ確実な実施に支障のないこと』との観点から審査する、と述べた。


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