[原子力産業新聞] 2007年2月8日 第2366号 <3面>

WECが欧州電力産業の将来予測で報告書 欧州で高まる原子力の役割

世界エネルギー会議(WEC)は1月30日、報告書「欧州における原子力発電の役割」を発表し、欧州で今後原子力発電が重要となるとの予測を示した。WECは、世界90か国の発電事業者から構成される組織。今回の報告書は、欧州各国のメンバーから29名の専門家で構成されるワーキング・グループが取りまとめたもの。

報告書の中でWECは、@エネルギー安全保障A温室効果ガス排出量の削減Bエネルギー価格の抑制による経済競争力の維持−−の3つの観点から、欧州で今後原子力の役割がますます高まると主張。そして原子力発電の経済性を高めるために、運転期間延長や出力増強の実施を推奨し、温室効果ガスの排出にキャップ制などの制限措置が取られた場合、原子力の優位性はさらに高まる、と指摘した。

欧州の総発電電力量に占める電源別シェアは、火力=54.2%、原子力=27.5%、水力=15.2%、その他再生可能エネルギー=3.1%。WEC報告書は、既存の発電設備容量のうち80%(10億kW)以上は、2010〜2030年にリプレースを余儀なくされると予測し、「これは大きな問題だが、現時点での判断が今後の欧州の電力事情を左右するという意味では、またとない好機」と述べ、欧州の電源構成を再構成する強い意欲を示した。

またWECは、人々の懸念は「原子力発電の安全性」から「放射性廃棄物問題」にシフトしていると指摘。原子力発電を論じる際に問題視される使用済み燃料の処分について、「世界全体の使用済み燃料発生量は、年間約1万2,000トン。これらが再処理された場合、発生量は4%に減量される」と強調。再処理の重要性を示しつつ、使用済み燃料の処分に当たっては経済性やPAを考慮することが肝要との見方を示した。

そしてWECは今後の技術開発の方向性についても言及。新型炉や燃料サイクル技術の開発が重要とした上で、2030〜2040年頃をメドに第3世代+炉や第4世代炉を導入する見通しを示した。新型炉は電力供給以外にも水素製造など多目的に供するという。

WECはそのほか、新規原子力発電所建設に関するプロジェクト・リスクを緩和するために、各国の許認可手続きの合理化や、確固とした電力市場ルールの形成を提言している。


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