[原子力産業新聞] 2007年2月8日 第2366号 <3面>

オーストラリアで原子力導入論議が加速 IPCC報告書も後押し

地球温暖化に関する最新の分析や予測を集約する世界気象機関の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第1作業部会が2日、人間の経済活動による温室効果ガスの増加が地球温暖化をもたらしたことを明確にする第4次報告書を取りまとめた。これを受け、原子力発電導入論議が活発化しているオーストラリアでは、首相自身が率先して原子力発電導入を強く訴えている。

オーストラリアのJ.ハワード首相は3日、同報告書を「温室効果ガスが地球に損害を与えている確たる証拠」とし、オーストラリアは引き続き温室効果ガス排出量の削減に向けた検討を継続するべきとの声明を発表した。

首相は声明の中で、「偏見なく勇気を持って、原子力を含むあらゆる選択肢を検討しなければならない」と呼びかけ、太陽光や風力では国内の電力需要をまかなうことが出来ず、原子力が最も現実的な選択肢と主張。国内石炭産業についても「新技術の開発により将来的には石炭火力をクリーン化する」としつつも、「当面は原子力が優位な状況にある」との認識を示した。

先月就任したばかりのM.ターンブル環境相も同様の見解を示し、IPCC報告書によって「地球温暖化が現実問題であることが明らかになった」と指摘。「イデオロギーの議論は求めていない。現実的で、経済性に見合い、効果的な選択をしたい」と、原子力導入に関する冷静な議論を呼びかけた。

一方、野党労働党はこれに対し、ハワード政権は口先ばかりでなにも行動してこなかったと反発。労働党のスポークスマンは「過去10年、ハワード政権は京都議定書も批准せず、地球温暖化に対し無策だった」として、首相の姿勢を非難している。

オーストラリアでは昨年12月29日、首相が直々に設置した原子力導入に関するタスクフォースが、最終報告書を発表。2020年から30年間で100万kW級原子力発電所を25基建設し、同国の温室効果ガス排出量を18%削減するとのシナリオを示した。

原子燃料サービス分野については、「政府は関連法規の整備のみを実施し、燃料サービスへの参入の是非は各企業の経営判断に任せる」との認識を示している。


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